歯科医院のInstagramは、投稿の内容によっては「医療広告」として扱われます。厚生労働省の医療広告等ガイドラインは、患者の受診等を誘引する意図があり、歯科医院などの名称が特定でき、医業または歯科医業に関する内容であれば医療広告に当たると整理しています。SNSでは、プロフィール、投稿(画像・動画を含む)、返信が広告の構成要素として示されています。広告に当たる投稿では、虚偽・比較優良・誇大な表現、患者の体験談、誤認させるおそれのある治療前後の写真が禁止され、書ける事項も原則として限られます。まず「歯科医院のアカウントの投稿は広告として扱われ得る」と考え、広告できる事項から投稿を組み立て、迷う表現は所管の保健所などに確認してください。
この記事は、歯科医院の院長や運営担当者、Instagramの運用を任された担当者に向けて書いています。内容は、広告に当たるかどうかの判断、プロフィール・投稿・返信・ハッシュタグの扱い、禁止される広告の類型、広告できる事項と診療科名、治療前後の写真、口コミ・体験談、自由診療を紹介するときの限定解除の要件、投稿案の仕分けと点検の手順です。根拠は、厚生労働省の医療法における病院等の広告規制についてのページと、そこに掲載されている資料です。資料は、医療広告等ガイドライン(令和8年3月30日最終改正)、医療広告等ガイドラインに関するQ&A、医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)の3つです。いずれも2026年10月28日に実際に開いて確認できた記載に限っています。個々の投稿が広告に当たるか、表現が許されるかの最終的な判断は、医院を所管する保健所などの自治体窓口や専門家にご確認ください。文中の投稿案は手順を説明するための「仮の例」で、実在の医院や患者さんの話ではありません。
歯科医院のInstagramは医療広告になるのか|指針の3つの要件

医療広告とは、患者の受診等を誘引する意図があること、医業または歯科医業を提供する者の名称や診療所の名称が特定できること、医業または歯科医業に関する内容であることの3つをすべて満たす表示です。
ガイドラインは、広告に当たるかどうかを次の3つの要件で判断するとしています(医療広告等ガイドライン第2の1)。
- 患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)
- 医業もしくは歯科医業を提供する者の氏名・名称、または病院・診療所の名称が特定可能であること(特定性)
- 医業もしくは歯科医業、または病院・診療所に関する内容であること
誘引性は、その情報物の対象となる者の利益を期待して誘引しているかどうかで判断されます。同じ箇所に、新聞記事は特定の病院を推薦する内容でも誘引性の要件を満たさないものとして扱う一方、病院等が自らのウェブサイト等に掲載する治療等の内容または効果に関する体験談は広告に該当するという記載があります。特定性は、複数の医療機関を対象にしている場合も該当します。
「広告ではない」と書けば除外されるわけでもありません。ガイドラインは、「これは広告ではありません。」と書いていても病院名等が記載されている例や、「具体的な病院名は記載できません」と表示しつつ住所・電話番号・ウェブサイトのアドレス等から病院が特定できる例を、広告として取り扱うことが適当な場合として挙げています(第2の2)。患者等に広告と気付かれないよう行われるステルスマーケティングも、医療機関が広告料等の費用負担などの便宜を図って掲載を依頼しているなど、実質的に要件を満たす場合は広告として扱うのが適当とされています。
直接的な表現だけが対象でもありません。ガイドラインは、名称やキャッチフレーズ、写真・イラスト・絵文字、ウェブサイトのURLやEメールアドレスなどによる暗示的・間接的な表現も、一般の人が医療広告と認識し得るなら対象になるとしています(第2の3)。病人が回復して元気になる姿のイラストは、効果は広告可能な事項ではなく回復を示すと誤認を与えるおそれがあるとして、認められない例に挙がっています。アカウント名や絵文字、ハッシュタグも同じ観点で点検すると安全です。
採用の投稿は少し事情が違います。ガイドラインでは、職員の採用を目的としたいわゆる求人広告は、医療機関等の名称や連絡先が書かれていても、受診等を誘引するものではないため、ガイドラインの対象となる広告ではないと整理されています(第2の5の(5))。ただし、採用の投稿に診療の案内を混ぜた場合の扱いは書かれていないため、採用の投稿と診療案内の投稿は分けて作る運用をお勧めします。
投稿のどこが対象か|プロフィール・投稿・返信・ハッシュタグ
事例解説書は、SNSの医療広告を「プロフィール」「投稿(テキスト、画像、動画。一定期間で限定公開されるものを含む)」「返信」の組み合わせとして整理し、その一つにでも禁止される事項が含まれていれば違反となるとしています。
次の表は、事例解説書(第6版)のSNSの章(39)から、医療広告に相当するとされた箇所と、点検で見ることを並べたものです。右の列は、記載から導いた点検の視点であり、指針の文言そのものではありません。
| 場所 | 事例解説書の扱い | 点検で見ること |
|---|---|---|
| プロフィール | 広告の構成要素の一つ。虚偽・誇大・比較優良・体験談などは、プロフィール、投稿、返信のいずれかに含まれていれば違反となる | 肩書、診療内容の紹介文、強みの表現、リンク先の説明 |
| 投稿(文章) | 1つの投稿は単独で1つの広告として扱われ、限定解除を使う場合は各投稿内で必要な情報が完結していることが求められる | 投稿ごとに、書けない表現がないか |
| 画像・動画・音声 | 画像、動画、音声などの手段による情報提供も医療広告に相当する | 画像に入れた文字、動画のテロップや音声、写真そのもの |
| 一定期間で限定公開される投稿 | 投稿の中に、一定期間で限定公開されるものも含むと整理されている | 消える投稿でも、通常の投稿と同じ基準で確認する |
| 返信 | 字数制限がある場合に、自らの投稿への返信で続けて一連の投稿として情報提供するときも医療広告に相当する | 返信で補足した内容を含めて全体を確認する |
| ハッシュタグ | タグ付け部分も医療広告に相当する。投稿内容と関係のないハッシュタグによる誘引は不適切とされている | 投稿の内容と関係があり、効果を連想させない語だけを使う |
| 個人のアカウント | 個人アカウントによる情報でも、医療機関・医師等への特定性と誘引性をいずれも有する場合は医療広告に相当する | 院長やスタッフの個人アカウントでの医院の紹介も、医院の投稿と同じ基準で確認する |
この表のとおり、対象はフィードの投稿だけではありません。プロフィール欄に書いた「強み」の一文や、返信で補った説明も確認の範囲に入ります。ダイレクトメッセージでの個別のやり取りについては、確認できた範囲では、ガイドライン・Q&A・事例解説書のいずれにも扱いが書かれていませんでした。運用で扱う場合は、保健所に確認してから進めてください。
禁止される広告の類型|歯科の投稿で点検する表現
ガイドラインが禁止する広告は、虚偽広告、比較優良広告、誇大広告、公序良俗に反する広告、広告可能事項以外の広告、患者等の主観に基づく体験談、誤認させるおそれのある治療等の前後の写真です。
次の表は、医療広告等ガイドラインの第3の1、Q&A、事例解説書が示す類型と例を、歯科の投稿の点検に使いやすい形に並べたものです。右の列は、推奨する書き方ではなく、公式資料が認められない例として挙げている内容です。
| 類型 | ガイドラインの考え方 | 公式資料が認められない例として挙げている内容 |
|---|---|---|
| 虚偽広告 | 内容が虚偽の広告。罰則付きで禁じられている | 安全性を言い切る表現、定期的な処置が必要なのに全部の治療が1日で終わるような表現、根拠や調査方法を示さない満足度、加工・修正した治療前後の写真 |
| 比較優良広告 | 他の医療機関より優れている旨の広告。事実であっても、最上級の表現など優秀性について著しい誤認を与える表現は禁止 | 最上級の表現、「著名人も当院で治療を受けております。」のような著名人との関連性を強調する表現 |
| 誇大広告 | 必ずしも虚偽ではないが、事実を不当に誇張したり人を誤認させたりする広告 | 口腔管理体制強化加算などの届出を、国が認定・認証したかのように書く表現。科学的根拠が乏しい情報の引用。「痛くない治療」のような科学的根拠がなく虚偽・誇大のおそれがある表現(Q&AのQ3-22) |
| 広告可能事項以外 | 法と広告告示が定める事項以外は、原則として広告できない | 診療科名として認められない「インプラント科」「審美歯科」。死亡率や術後生存率などの結果の数値 |
| 体験談 | 患者自身の体験や家族等からの伝聞に基づく主観的な体験談を、誘引を目的に紹介することは認められない | 患者の声、口コミサイトからの転載・抜粋、スタッフの体験談、他の人の投稿を引用した体験談の紹介 |
| 治療前後の写真 | 誤認させるおそれがある治療等の前または後の写真等は認められない。詳細な説明を付した場合はこれに当たらない | 写真やイラストだけで説明が不十分なもの、前または後の片方だけの写真 |
| 公序良俗に反する広告・品位を損ねる広告 | わいせつ・残虐な図画や差別を助長する表現は公序良俗に反する広告。費用の強調、医療の内容と直接関係のない事項による誘引、ふざけた表現は品位を損ねるとして慎むべきとされている | キャンペーンや割引の強調、無料相談の人に物品を贈る旨の強調、子どもに治療後の物品を贈る旨の強調 |
誇大広告の欄にある届出の例は、歯科に特有の注意点です。事例解説書は、口腔管理体制強化加算や歯科外来診療環境体制加算などは医療機関が加算要件に合致している旨を届け出るものであり、厚生労働省等が特別に認定・認証を与えていると誤認させる表現は「誇大な広告」に該当するとしています。書くなら、あくまで届出済みである旨にとどめます(事例解説書の(13))。
費用の扱いも、日常の投稿で迷いやすい点です。Q&Aは、無料で健康相談を実施している旨は広告可能とする一方、費用を前面に押し出した広告は品位を損ねるもので、慎むべきだとしています(Q2-12)。「無料」と書くこと自体より、見せ方で判断が分かれます。
InstagramとGoogleマップからの集客を見直したい事業者の方へ
15分のオンライン勉強会(マンツーマン・無料)で、自社の現状と最初に取り組むことを整理します。
広告できる事項と診療科名|歯科の投稿で土台になる情報
広告できる事項は、医療法第6条の5第3項と広告告示が定めた事項で、診療科名、医院の名称・電話番号・所在、診療日・診療時間・予約の有無、保険医療機関である旨、施設・設備・従業者に関する事項、診療に従事する医療従事者の氏名・年齢・性別・役職・略歴などです。
ガイドラインの第3-2の4には、これらの事項が号ごとに説明されています(医療広告等ガイドライン)。診療日と診療時間は、患者に提供すべき情報であるため、可能な限り記載するのが望ましいとされ、予約を受け付ける電話番号やウェブサイトのURLを示すことも差し支えないとされています。保険医療機関である旨は、指定を受けた旨として広告可能な例の最初に挙がっています。医院の建物の写真は、当該医院のものであれば広告可能とされています。診療に従事する歯科衛生士などの医療従事者の氏名・年齢・性別・役職・略歴も広告可能ですが、研修は広告が認められていない事項と明記されています。
診療科名には特に注意が必要です。ガイドラインは、歯科の診療科名の例として「歯科」「小児歯科」「矯正歯科」「歯科口腔外科」を挙げ、組み合わせの例として「小児矯正歯科」も示しています。一方、法令に根拠のない名称は診療科名として広告できず、歯科に関係する名称として「インプラント科」「審美歯科」が例示されています。Q&Aも、「審美治療」という表現は様々な治療の方法が含まれ、どの治療を提供するのかが明確でなく誤認を与える可能性があるため、広告できないとしています(Q3-18)。
治療の方法については、広告告示で認められた保険診療などに限られます(医療広告等ガイドライン)。Q&Aは、個々の治療として、たとえば「ホワイトニング」は、医薬品医療機器等法上の承認を得ている医薬品を使用し、自由診療である旨と標準的な費用を記載する場合には広告可能としています(Q3-18)。ガイドラインは、公的医療保険が適用されない歯列矯正を、自由診療である旨と標準的な費用を併記する場合に広告可能な治療の方法の具体例として挙げています。いずれも、効果の強調や仕上がりの約束は含まれません。
事業者向けの新商品「Instagram×MEO マンツーマン勉強会」の相談日時は、下のリンクから予約できます。なお、この勉強会は、広告表現が医療広告規制に適合するかを判定するものではありません。表現の適否は保健所などでご確認ください。
治療前後の写真・症例の投稿の扱い
治療前後の写真は、治療等の内容や効果について患者等を誤認させるおそれがある場合は広告できず、治療内容・費用等と主なリスク・副作用等の詳細な説明を付した場合はこれに当たらないとされています。
ガイドラインは、個々の患者の状態等により治療の結果は当然に異なることを理由に、誤認させるおそれのある写真等を認めていません。術前または術後のどちらか片方だけの写真やイラストも対象です(医療広告等ガイドライン第3-1の1の(7)、Q&AのQ2-8)。さらに、治療効果に関する事項は広告可能事項ではないため、限定解除の要件を満たした場合でなければ、術前術後の写真等は広告できないとも書かれています。
説明を付す場合も、置き方が問われます。ガイドラインは、詳細な説明をリンク先のページに載せたり、利点や長所に比べて極端に小さな文字で載せたりすることを認めていません。事例解説書は、SNSの事例として、写真だけで説明が一切ないもの、通常必要とされる治療内容・費用等が足りないもの、詳細がクリックしないと表示されないもの、リンク先のページで説明しているものを、いずれも問題のある例に挙げています。バナーの遷移先の公式SNSに同じ写真が説明なしで載っている例も、問題のある事例として示されています(事例解説書の(22)(24)(42))。
事例解説書の改善例では、写真に添える説明として、治療内容、治療期間・回数、費用、リスク・副作用が並んでいます。実際の項目や書き方は、提供する治療に合わせて決めます。写真を加工・修正して見せることは虚偽広告に当たります。事例解説書には、実際には施術していない画像を片方だけきれいに加工して、ホワイトニングの術前術後のように見せる例が載っています(事例解説書の(3))。
この記事では、治療前後の写真を安全に載せる条件を断定しません。説明の十分さや置き方の判断は、治療の種類や投稿の構成によって変わるためです。写真を使う場合は、投稿案と説明文を並べて保健所に相談し、迷うなら写真自体を使わない設計も選べます。
口コミ・体験談・患者さんの声の扱い
医療広告における体験談の禁止とは、医療機関が、治療等の内容や効果について、患者自身の体験や家族等からの伝聞に基づく主観的な体験談を、受診の誘引を目的として紹介することを認めないという意味です。
ガイドラインは、感想は個々の患者の状態により異なり、誤認を与えるおそれがあることから、広告が可能な範囲の内容でも体験談の広告は認められないとしています(医療広告等ガイドライン第3-1の1の(6))。事例解説書は、次のような形でも規制の対象となる事例を示しています。
- 患者が自分のアカウントに書いた感想を、医院が引用して紹介する(他の人の投稿を引用して自院のサービスの体験談を紹介している場合も違反)
- 口コミサイトの口コミを転載、または医院に有利なものを抜粋して掲載する
- 院長やスタッフ自身の体験談、あるいは患者の体験をスタッフが代わりに書いた記事
- 医師による症例紹介の中で、患者の主訴のように書かれた治療内容・効果の体験談
- 医院の依頼で口コミサイトの運営者が、体験談の内容を編集する
一方、個人のウェブサイトやSNSの個人ページ、第三者が運営する口コミサイトに患者が自分で体験談を載せている場合は、医療機関が広告料等の費用負担などの便宜を図って掲載を依頼しているといった誘引性が認められないなら、広告に該当しません(Q&AのQ2-11)。つまり、医院が依頼や謝礼を伴って書いてもらったものは広告として扱われ得て、体験談の禁止に触れます。インフルエンサーに紹介を依頼する場合も同じ観点が必要で、契約書の項目はインフルエンサーPR依頼の契約書に入れる項目で、PR表記の考え方は企業SNSのステマ規制対応で整理しています。
口コミをもとにしたランキングの扱いにも注意が必要です。Q&Aは、ランキングサイトを装って、口コミ(体験談)等に基づき医療機関にランキングを付すなど、特定の医療機関を強調している場合は、比較優良広告に該当する可能性があり、広告できないとしています(Q2-10)。
患者さんの顔や診察室が写り込む写真の扱いは、医療広告規制とは別の個人情報や肖像の問題です。この点は厚生労働省の広告ガイドラインには書かれていないため、この記事では扱いません。写真と同意の一般的な考え方は、企業SNS投稿の著作権・肖像権チェック手順のほか、業種別の介護施設のInstagram運用、学習塾のInstagram運用でも取り上げています。
自由診療を紹介するときの限定解除の要件

広告可能事項の限定解除とは、患者等が自ら求めて入手する情報について、省令の要件を満たす場合に限り、広告可能事項以外の事項も広告できるとする仕組みで、自由診療の紹介にはさらに治療内容・費用とリスク・副作用の情報提供が求められます。
ガイドラインは、限定解除が認められるのは次の4つをすべて満たした場合で、3つ目と4つ目は自由診療について情報を提供する場合に限るとしています(医療広告等ガイドライン第3-3の2)。限定解除をしても、虚偽・誇大・比較優良・体験談などの禁止は残ります。
| 要件 | ガイドラインの内容 | SNSでの考え方(事例解説書) |
|---|---|---|
| 1つ目 | 患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること。バナー広告や、検索サイトのスポンサー表示、費用を払って検索結果の上位に出す状態のものは満たさない | 事例解説書は、一般的なウェブサイト(リスティング広告・バナー広告を除く)なら原則この要件を満たすことを前提に、2つ目以降を対象として事例を解説している |
| 2つ目 | 表示される情報について、患者等が容易に照会できるよう、問い合わせ先(電話番号、Eメールアドレス等)を明示すること | プロフィールなどに、医院の連絡先を載せておく |
| 3つ目 | 自由診療の、通常必要とされる治療の内容、標準的な費用、治療期間・回数を情報提供すること。最低金額だけの掲載は十分でなく、最低金額から最高金額までの範囲などで示す | 別のリンク先でないと確認できない状態は不十分。プロフィール、投稿、返信の一連の広告の中で説明する |
| 4つ目 | 自由診療の主なリスク・副作用等を、利点や長所と同様に分かりやすく情報提供すること。対象外の患者や禁忌事項、治療を受けるうえでの注意事項は、主なリスク・副作用の情報提供に当たらない | 極端に小さな文字、リンク先のみの掲載は不十分。複数のSNSに情報が分散している状態も、一体的かつ一覧性をもった情報提供とは言えない例に挙がっている |
SNSには、投稿の字数や構成の制約があります。事例解説書は、必要な情報を一連の投稿の中で一体的かつ一覧性をもって示すこと、たとえばプロフィールや1つの投稿の中にまとめる、あるいは情報を載せた投稿の場所を明示してその近くで示すことを、分かりやすい例として図示しています(事例解説書の(40)(43))。1つの投稿は単独で1つの広告として扱われるため、投稿ごとに必要な情報が完結しているかを確認します。
未承認の医薬品や医療機器を自由診療で使う場合は、未承認である旨や入手経路など、追加の明示事項が求められます(ガイドライン第3-3の2)。該当する場合は、投稿を作る前に保健所へ相談してください。必要な情報を一連の投稿の中に収められるかを先に決めてから、自由診療の投稿を作ります。説明がリンク先のウェブサイトにしかない場合は、SNS側の投稿では限定解除の要件を満たしにくいことに注意してください。
医療広告のほかに確認する法令|景品表示法・薬機法
医療広告には、医療法のほかに、景品表示法、医薬品医療機器等法(薬機法)、健康増進法、不正競争防止法などの規制が重なって適用され得ます。
ガイドラインは、これらの他法令に違反する広告は、他法令に基づく指導・処分等の対象となり得るとしています(医療広告等ガイドライン第1の3、第3-1の1の(8))。たとえば薬機法では、医薬品・医療機器等の名称や効能・効果、性能等に関する虚偽・誇大な広告が禁止され、医薬品の商品名は広告してはならない例に挙がっています。ホワイトニング剤など医薬品等に関わる表現は、医療広告の確認に加えて、この観点でも点検します。企業のSNS全般の薬機法の確認手順は、企業SNS投稿の薬機法チェック手順にまとめています。
ガイドラインは、他法令に基づく処分を受けることや、他法令に違反することを理由に、医療法の広告違反が免責されることはないとしています(第5の3)。医療広告規制をクリアしていても、景品表示法などの確認は別に必要です。
投稿案の仕分け(仮の例)
投稿案の仕分けとは、公開前に1つずつの投稿案を、広告可能な事項に当たるか、書き方に注意が必要か、載せない方がよいかに分けて、承認者が判断しやすくする作業です。
次の表は、歯科医院の担当者が出した投稿案を仕分ける、仮の例です。判定は、ガイドラインなどこの記事の本文で確認できた記載に基づく目安で、実際の投稿の最終判断は保健所などの確認によります。
| 投稿案(仮の例) | 仕分けの考え方 | 確認した根拠 |
|---|---|---|
| 診療時間・休診日・予約の受け方のお知らせ | 広告可能な事項。予約を受け付ける電話番号やURLの記載も差し支えない | ガイドライン第3-2の4の(4) |
| 医院の外観や待合室の写真 | 当該医院の建物の写真は広告可能。他の医院の写真は認められない | ガイドライン第2の3、第3-2 |
| 歯科衛生士の紹介(氏名・役職・略歴) | 氏名・年齢・性別・役職・略歴は広告可能。研修は広告可能な事項ではなく、載せない | ガイドライン第3-2の4の(9) |
| 患者さんからのお礼の投稿を引用して紹介 | 体験談に当たるおそれがあり、載せない | ガイドライン第3-1の1の(6)、事例解説書(41) |
| 治療前後の写真だけの投稿 | 説明が不十分で、載せない。写真を使うなら説明の内容と置き方を保健所に相談する | ガイドライン第3-1の1の(7)、事例解説書(42) |
| 自由診療のホワイトニングの案内 | 承認を得た医薬品を使う場合に、自由診療である旨と標準的な費用を併記すれば広告可能。効果を強調する言葉は書かない | Q&AのQ3-18 |
| 期間限定の割引キャンペーンの告知 | 費用を強調した広告に当たり、品位を損ねるおそれがあるため避ける | ガイドライン第3-1の1の(8) |
| 歯科衛生士の採用募集 | 求人広告は、受診等を誘引するものではなく、広告の対象外と整理されている。診療案内とは分けて投稿する | ガイドライン第2の5の(5) |
| 歯みがきなど一般的な口腔ケアの紹介 | ガイドラインに個別の整理はない。特定の治療を勧める内容や効果を強調する内容にしない。迷う場合は保健所に確認する | ガイドライン第3-1の1の(3)(誇大広告) |
仕分けのとき、判断が割れた投稿案は、その場で修正せずに保留にして、保健所に確認する案件としてまとめます。「載せない」に仕分けた投稿案があっても、医院の基本情報や通院のための情報を伝える投稿だけで、アカウントの運用は成り立ちます。
投稿前の点検と社内の確認体制・相談先
投稿前の点検とは、投稿の承認者が、広告に当たる前提で、禁止される表現と広告可能事項の範囲、写真や説明の置き方を確認し、確認の記録を残す手順です。
承認者が投稿ごとに確かめる項目の例を挙げます。順番は問いません。
- 文章、画像内の文字、動画の音声、ハッシュタグ、アカウント名に、最上級の表現や他院との比較、著名人との関連を示す語がないか
- 効果、仕上がり、安全性、痛みの少なさを言い切る表現がないか。数字の満足度や成功率を、調査方法を示さずに載せていないか
- 患者・家族・スタッフの感想や口コミを、引用・転載・抜粋・編集していないか
- 治療前後の写真や症例の写真に、治療内容・費用・治療期間と回数・主なリスク・副作用の説明を同じ投稿内に付けているか。それを付けられないなら、写真を使わない判断をしたか
- 自由診療を扱う場合は、自由診療である旨と標準的な費用を併記しているか
- 診療科名や医院の名称が、認められた表記になっているか
- 届出済みである旨を、国の認定・認証のように書いていないか
- 費用の強調や、物品のプレゼントを前面に出していないか
外部の会社に運用を任せる場合も、確認の責任は医院に残ります。ガイドラインは、広告を企画・制作する広告代理店やアフィリエイターも、広告の内容が虚偽・誇大などで法やガイドラインに違反する場合は、広告依頼者とともに指導等の対象となり得るとしています(医療広告等ガイドライン第2の6)。投稿の承認権限は医院に置き、承認した投稿案と日付を記録しておくと、あとで見直しやすくなります。コメントへの返信の基準づくりは、企業SNSのコメント・DM対応ルールの作り方が参考になります。返信も広告の構成要素ですので、返信の文面もこの点検の対象に含めてください。
相談先は、厚生労働省のページに「医療に関する広告についてのご相談は、医療機関を所管する自治体の窓口にご連絡をお願いします。」と案内されています(医療法における病院等の広告規制について)。同じページに医療広告相談窓口一覧のPDFも掲載されています。ガイドラインは、各自治体が相談窓口を明確にするよう求めており、具体的には医療安全支援センターや保健所の医療法担当部署が想定されるとしています(第5の1)。判断に迷う投稿案は、投稿の画像と文面を添えて、所管の窓口に相談してください。業種別の記事として、国家資格に関わる別の制度を扱う整骨院・接骨院のInstagram運用、子どもの写真の同意を扱う保育園・幼稚園のInstagram運用、会員写真の同意を扱うパーソナルジムのInstagram運用もあります。
よくある質問(FAQ)
- Q1. 院長やスタッフの個人アカウントで医院のことを投稿しても、医療広告になりますか。
- 個人アカウントによる情報でも、医療機関・医師等への特定性と誘引性をいずれも有する場合は、医療広告に相当すると事例解説書に記載されています(事例解説書の(39))。個人の投稿であることを理由に確認を省かず、医院の投稿と同じ基準で点検してください。
- Q2. 患者さんが自分のアカウントに書いてくれた感想を、リポストして紹介してもよいですか。
- 患者が自分のアカウントに書いた感想そのものは、医院が依頼や費用負担などをしていなければ広告に該当しないとされています(Q&AのQ2-11)。しかし、事例解説書は、他の人の投稿を引用して自院のサービスの体験談を紹介している場合は違反としており、医院が紹介する時点で規制の対象になります(事例解説書の(41))。
- Q3. インプラントや矯正などの自由診療は、Instagramで紹介できますか。
- 自由診療は、一部の例外を除いて広告可能事項に該当しないため、原則として広告できないと事例解説書に書かれています。公的医療保険が適用されない歯列矯正は、自由診療である旨と標準的な費用を併記する場合に広告可能な例として、ガイドラインに挙げられています。それ以外の自由診療は、限定解除の要件を満たせるかを確認します(医療広告等ガイドライン、事例解説書の(43))。
- Q4. 「無料相談」や「初回無料」と投稿してもよいですか。
- Q&Aは、無料で健康相談を実施している旨は広告可能としています。ただし、費用を強調した広告は品位を損ねるため慎むべきです(Q&AのQ2-12)。無料相談を受けた人に物品を贈る旨を強調することは、医療の内容と直接関係のない事項による誘引として避ける例に挙がっています。
- Q5. 口コミサイトの評価やランキングの画面を、投稿に載せてもよいですか。
- 口コミサイトの口コミを転載・抜粋することは、体験談や誇大広告の事例として示されています。口コミをもとにしたランキングで特定の医療機関を強調する場合は、比較優良広告に該当する可能性があります(Q&AのQ2-9、Q2-10)。
- Q6. 芸能人や著名人が通っていることを紹介できますか。
- ガイドラインは、芸能人や著名人が実際に患者等である場合でも、その旨は広告できない事項であり認められないとしています(医療広告等ガイドライン第3-2の5)。著名人との関係性を強調する表現は、比較優良広告にも当たり得ます。
- Q7. 運用を外部の会社に任せていれば、医院に責任はありませんか。
- 広告代理店なども、違反があれば広告依頼者とともに指導等の対象となり得るとされています(医療広告等ガイドライン第2の6の(2))。責任の分担は契約によって変わるため、投稿の承認を医院が行う流れを、契約で決めておくことをお勧めします。
まとめ|広告として扱われる前提で、広告できる事項から組み立てる
歯科医院のInstagramは、プロフィール、投稿、返信、ハッシュタグのすべてが医療広告として扱われ得ます。投稿は、診療時間や予約の案内、医院の外観、医療従事者の氏名と略歴といった広告できる事項から組み立て、体験談、口コミの転載、誤認させるおそれのある治療前後の写真、最上級の表現、費用の強調は載せません。自由診療を紹介するなら、治療内容・費用・治療期間と回数・主なリスクを、同じ投稿の中で一体的に示せるかを先に確認します。医療広告の確認では、保健所などの窓口に画像と文面を添えて相談するのが、最も迷いの少ない進め方です。Instagram運用の進め方を新商品「Instagram×MEO マンツーマン勉強会」で相談したい事業者の方は、下のリンクから相談日時を予約できます。
InstagramとGoogleマップの集客、何から改善すればいい?
オンラインのマンツーマン勉強会で、自社のInstagramとGoogleマップの現状を確認し、最初に取り組むことを整理します。AIを使った投稿づくりや口コミへの返信も扱います。
Instagram×MEO マンツーマン勉強会(15分・無料)を予約する