企業SNS投稿の著作権・肖像権チェック手順|写真・音楽・UGC二次利用の確認項目

企業SNS投稿の著作権・肖像権チェック手順|写真・音楽・UGC二次利用の確認項目
📅 公開日: 2026年9月18日🔄 最終更新: 2026年10月30日

企業SNS投稿で権利トラブルを防ぐ最短の方法は、投稿ごとに「素材の著作権」「写っている人の肖像権」「規約上の自社の義務」の三つを別々に確認し、確認した事実を記録として残すことです。

三つをまとめて「権利関係は大丈夫か」と一言で確認しようとすると、写真は問題なくても音楽の手続きが漏れる、といった抜けが起きます。

この記事は、企業のSNS担当者が投稿前に何を、どの順番で、どこまで確認すればよいかを、著作権法と個人情報保護法の条文、文化庁の解説、JASRACの案内、各プラットフォームの公式規約に当たりながら手順の形で整理したものです。ステルスマーケティング規制(景品表示法)のPR表記については企業SNSのステマ規制対応の記事で扱っているため、ここでは著作権・肖像権・パブリシティ権の確認手順に絞ります。

あらかじめ前置きをしておきます。この記事は法律の一般的な解説であり、個別の投稿が権利侵害に当たるかどうかの判断は、事実関係によって結論が変わります。実際の案件については弁護士など専門家に相談してください。条文の内容は本文中のe-Gov法令検索のリンクから原文を確認できます。

目次

企業SNS投稿で確認する権利は三系統に分かれる

企業SNS投稿の権利確認とは、投稿に使う素材と被写体について、著作権法上の権利、人の人格・経済的利益に関わる権利、プラットフォーム規約上の義務を切り分け、それぞれ許諾または根拠を押さえる作業を指します。

SNS投稿で問題になる権利は、根拠が置かれている場所がそれぞれ違います。著作権と著作隣接権は著作権法という一本の法律に条文があり、誰が何を専有するかが書かれています。

一方で肖像権とパブリシティ権は、著作権法にも個人情報保護法にも条文としての定めが置かれておらず、裁判所の判断の積み重ねによって扱われてきた権利です。

プラットフォーム規約は法律ではなく契約であり、投稿した時点で自社が何を約束したことになるかが書かれています。

根拠が違うということは、確認の相手先も違うということです。著作権なら権利者または権利者団体、肖像権なら写っている本人、規約なら各社の最新の規約本文が相手になります。

投稿前に次の一覧で自分が今どこを確認しているのかを意識すると、確認の抜けが減ります。

権利の種類 根拠のある場所 許諾・確認の相手 企業SNSで問題になりやすい場面
著作権(財産権) 著作権法の条文 著作権者、または管理団体 他人の写真・イラスト・文章・楽曲を投稿に使う
著作者人格権 著作権法の条文 著作者本人(譲渡できない) 提供された写真をトリミング・加工する、作者名を出さない
著作隣接権 著作権法の条文 実演家、レコード製作者など 市販音源をそのまま動画に乗せる
肖像権・プライバシー 条文はなく裁判例の蓄積 写っている本人 来店客・社員・イベント参加者が写った写真の公開
パブリシティ権 条文はなく裁判例の蓄積 著名人本人、所属事務所 著名人の写真や名前を宣伝に使う
プラットフォーム規約 各社の利用規約 各社(契約の相手方) 投稿時に自社が権利処理済みだと表明している

著作権法の条文はe-Gov法令検索の著作権法で、個人情報保護法の条文はe-Gov法令検索の個人情報の保護に関する法律で全文を読めます。制度全体の解説や教材は文化庁の著作権のページにまとまっています。

著作権の確認手順|「誰の」「どの支分権」を使うのかを先に決める

支分権とは、複製権や公衆送信権のように、著作権という束のなかに含まれる個別の権利を指します。SNS投稿では、素材を保存する行為と、それをアップロードして誰でも見られる状態にする行為が、別々の支分権にかかわります。

著作権法は、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義し(第二条第一項第一号)、言語、音楽、美術、写真、映画、プログラムなどを著作物として例示しています(第十条第一項)。同じ第十条の第二項では、事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は言語の著作物に該当しないとも定めています。条文はe-Gov法令検索の著作権法から確認してください。

そのうえで、著作者は著作物を複製する権利を専有し(第二十一条)、公衆送信を行う権利を専有します(第二十三条第一項)。SNSへのアップロードは、手元に画像を保存する段階で複製、投稿して誰でも閲覧できる状態にする段階で公衆送信に関係します。

翻訳・編曲・変形・翻案の権利も著作者が専有し(第二十七条)、二次的著作物の利用について原著作物の著作者も同じ種類の権利を持ちます(第二十八条)。つまり「加工したから別物」という整理は成り立ちません。

実務では、投稿に使う素材を一つずつ次の順に確認していくと判断が早くなります。

  • その素材は著作物に当たるか(誰かの創作的な表現が含まれているか)
  • 著作者は誰か、著作権は誰に帰属しているか
  • 自社がしようとしている行為はどの支分権にかかわるか
  • その支分権について許諾を得ているか、権利制限規定に当てはまるか
  • 許諾の範囲(媒体・期間・改変の可否)を文書で確認できるか

社員が業務で作った素材については、職務著作の規定が関係します。法人その他使用者の発意に基づき、その法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものは、作成時の契約や勤務規則に別段の定めがない限り、その法人等が著作者になります(第十五条第一項)。逆にいえば、要件のどれかを欠けば会社の著作物として扱えない可能性が残ります。

外部に撮影や制作を依頼した場合、著作権は原則として制作者側に発生します。著作権者は他人に利用を許諾でき、許諾を得た者はその許諾に係る利用方法及び条件の範囲内で利用できます(第六十三条第一項・第二項)。

発注書や契約書に「納品物の著作権は譲渡する」「SNSでの利用を許諾する」といった条項があるかどうかで、投稿できる範囲が変わります。

制作会社や代理店に依頼している場合の確認観点はSNS運用代行の契約で失敗しない注意点とInstagram運用代行の契約前チェックリストにまとめています。

写真素材の確認手順|入手経路ごとに論点が変わる

素材の入手経路とは、その写真が自社の誰によって、どういう立場で撮られ、どこを経由して手元に来たかという履歴を指します。入手経路が特定できない素材は、権利の所在も特定できません。

写真は入手経路によって確認する内容が変わります。同じ「店内の写真」でも、社員が業務で撮ったものと、取引先からメールで送られてきたものでは、著作権の所在も、被写体の同意の有無も別の話になります。まずは経路を書き出し、経路ごとに確認項目を当てはめてください。

入手経路 著作権の所在(原則) 追加で確認すること 残しておく記録
社員が業務として撮影 職務著作の要件を満たせば自社 被写体になった人の同意、他社ロゴや作品の写り込み 撮影日・撮影者・撮影目的
外部カメラマンに依頼 契約に定めがなければ撮影者 譲渡か利用許諾か、SNS利用と加工の可否 発注書・契約書の該当条項
ストックフォトを購入 提供元と著作者 ライセンス種別、広告利用の可否、編集の可否 ライセンス番号と規約の取得日
取引先から提供を受けた 提供元またはその制作者 提供元自身が権利を持っているか、公開範囲の指定 提供時のメール本文と条件
SNSで見つけた投稿 投稿者または撮影者 本人への許諾依頼、使い方の明示 許諾依頼と承諾のやり取り全文
生成AIで作成 ツールの規約によって扱いが異なる 商用利用条件、既存の表現に似ていないか 使用ツール名・生成日・指示文

仮の例を挙げます。ある企業アカウントが、取引先から届いた商品写真をそのまま投稿しようとしたとします。この写真を撮ったのが取引先の社員なのか、取引先が依頼した制作会社なのかで、SNSに載せてよい範囲が変わります。

提供時のメールに「S.LineSNSでの掲載は可能ですか」と一行確認して返信をもらっておけば、後から経路をたどれます。これは法的な結論を出す作業ではなく、結論を出せる状態をつくる作業です。

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写り込みの確認手順|「軽微」かどうかで扱いが変わる

付随対象著作物とは、写真撮影や録画などの際に、撮影対象に付随して写り込んだ著作物のうち、作成された写真や動画のなかで軽微な構成部分にとどまるものを指す、著作権法上の用語です。

店内や街中で撮影すると、ポスター、BGM、他社製品のパッケージなどが写り込みます。

著作権法第三十条の二は、複製伝達行為を行うに当たって付随して対象となる著作物のうち、その作成伝達物において当該著作物が軽微な構成部分となる場合について、正当な範囲内での利用を認めています。

ただし、付随対象著作物の種類及び用途並びに利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでないという但し書きが付いています。条文はe-Gov法令検索の著作権法で読めます。

条文が「軽微」「正当な範囲内」という評価を含む言葉で書かれている以上、機械的な線引きはできません。

実務では、写り込んだ対象が投稿の主役になっていないか、その部分だけを拡大したりトリミングで強調したりしていないか、という二点を投稿前に見ておくと判断しやすくなります。写り込みを主役にした投稿は、条文が想定する「付随」から離れていきます。

屋外の彫刻や建築については別の規定があります。美術の著作物でその原作品が屋外の場所に恒常的に設置されているもの、または建築の著作物は、原則としていずれの方法によるかを問わず利用できるとされ、彫刻を増製する場合、建築の著作物を建築により複製する場合、屋外に恒常的に設置するために複製する場合、専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し販売する場合が除外されています(第四十六条)。

企業アカウントで街のオブジェを背景に撮る場面では、この四つの除外に当たらないかを見ておきます。

判断が割れそうな写り込みは、社内で結論を出さずに素材を差し替えるか、弁護士に相談するのが安全です。投稿を止める判断は取り消せますが、公開してしまった投稿は取り消せません。

肖像権・パブリシティ権の確認手順|条文がないぶんを同意書で埋める

肖像権とは、自分の容ぼうなどをみだりに撮影・公表されない利益を指す言葉で、パブリシティ権とは、著名人の氏名や肖像が持つ顧客吸引力を無断で商業利用されない利益を指す言葉です。いずれも法律の条文として定義が置かれていません。

実際に、著作権法にも個人情報保護法にも、「肖像権」や「パブリシティ権」を定義した条文はありません。どちらもe-Gov法令検索で全文を検索すれば確認できます。条文がないからこそ、企業側は同意の取り方と記録の残し方で対応することになります。

個人情報保護法の側から見ると、顔が写った写真は個人情報に当たる場面があります。同法第二条第一項は個人情報を、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの、または個人識別符号が含まれるものと定義しています。

同条第二項は個人識別符号を、特定の個人の身体の一部の特徴を電子計算機の用に供するために変換した符号などのうち政令で定めるものとしています。さらに同条第三項は、人種、信条、社会的身分、病歴などを含む個人情報を要配慮個人情報として区別しています。条文はe-Gov法令検索の個人情報の保護に関する法律から確認してください。

公開後にトラブルになった場合の相談先も知っておくと動きやすくなります。法務省は、インターネット上の誹謗中傷、名誉やプライバシーの侵害などを人権に関わる問題として挙げ、削除依頼の手引きや人権相談窓口をインターネット上の人権侵害をなくしましょうのページで案内しています。

同意を取るときに決めておく内容は5項目あります。

  • 掲載する媒体(自社のどのアカウント、広告に転用するか)
  • 掲載する期間と、削除を申し出る方法
  • 加工の範囲(トリミング、色調整、文字の重ね方)
  • 氏名・所属・役職を出すかどうか
  • 取得した同意の保管場所と保管期間

社員が被写体になる場合は、退職後の扱いも決めておくと後から揉めにくくなります。採用目的で撮影した社員の写真を、退職後も公開し続けるかどうかは、同意を取った時点では話題に上がりにくい論点です。

アカウントの担当者が変わるときに同意書の所在がわからなくなる事故も起きるため、企業SNSアカウントの権限管理と引き継ぎ手順と合わせて保管場所を決めてください。

音楽の確認手順|企業アカウントで手続きが必要になる条件

音楽の権利処理とは、楽曲そのものの著作権(作詞者・作曲者側の権利)と、その楽曲を収録した音源の著作隣接権(レコード会社やアーティスト側の権利)を、それぞれ別に確認する作業を指します。

JASRACは、JASRACが利用許諾契約を締結している動画投稿サービスについて、動画の投稿者は一定の範囲内であれば、JASRAC管理楽曲を含む動画を手続きなくアップロードできると案内しています。ただし利用方法によっては個別に手続きが必要になるとし、具体的なケースを動画投稿(共有)サービスでの音楽利用のページに挙げています。

企業SNSにとって重要なのは、JASRACがアカウントの所有・運営者を「個人(個人事業主を含む)」と「個人以外(企業や団体等)」に分けて説明している点です。企業アカウントは「個人以外」に当たります。

企業アカウントでの使い方 JASRACへの事前手続き JASRACの案内での説明
許諾契約のあるサービスへ一般的な動画を投稿 一定の範囲内なら手続きなし 投稿者は手続きなくアップロードできると案内
特定の企業・団体や商品、サービスを宣伝する動画 「広告目的複製」の手続き 音楽出版社が指定した金額の支払いが必要と案内
外国作品を含む動画を法人・学校・団体が投稿 「ビデオグラム録音」の手続き ライブ配信・生配信のみの場合は不要と案内
自社主催のイベントの模様を投稿 「演奏」に関する手続き コンサート・イベント等での演奏のページを参照と案内
許諾契約のないサービスへ投稿 各サービス運営者に確認 契約状況の一覧に掲載がなければ運営者へ問い合わせと案内

宣伝目的の動画に手続きが要るという点は、企業SNSの実務に直結します。商品紹介やキャンペーン告知の動画にBGMを付ける運用をしているなら、その動画が「特定の企業・団体や商品、サービスを宣伝するもの」に当たらないかを投稿前に見てください。

JASRACの案内では、ライブ配信・生配信のみの場合は広告目的複製の手続きは不要とされています。管理楽曲かどうかは作品データベースのJ-WIDで検索できます。

楽曲の権利をクリアしても、音源の権利は別です。JASRACは、市販のCDやダウンロードした音源を利用する場合、著作権とは別に著作隣接権(音源製作者やアーティストの権利)の許諾を得る必要があり、音源製作者へ直接問い合わせるようインターネット上での音楽利用のページで案内しています。

著作権法も、実演家は実演を録音し録画する権利を専有し(第九十一条第一項)、レコード製作者はレコードを複製する権利を専有する(第九十六条)と定めています。編曲したり歌詞を翻訳・替え歌にしたりする場合は、作詞者・作曲者の意向を確認する必要があるともJASRACは案内しています。

プラットフォーム側の扱いにも注意が要ります。TikTokのサービス規約は、本サービスからまたは本サービスを通じて利用できる、音声および音声に含まれこれと一体をなす音楽作品に関しては、いかなる権利も許諾されないものとすると定めています。規約本文はTikTokサービス規約で読めます。アプリ内で使える音源が、そのまま自社の他媒体でも使えるとは限らないという整理になります。動画制作を外部に頼む場合の発注観点はSNS動画編集の外注費用相場と依頼方法で扱っています。

UGC二次利用の確認手順|リポストと公式投稿への転用は別物

UGCの二次利用とは、ユーザーが投稿した写真・動画・テキストを、企業が自社のアカウントや広告など、元の投稿とは別の場所で使うことを指します。プラットフォームの共有機能を使う場合と、素材を取り出して使う場合では、かかわる権利が変わります。

プラットフォームが用意している共有機能を使って他人の投稿を自分のタイムラインに表示させる行為と、その投稿から画像を保存して自社の新しい投稿として出す行為は、別に考えてください。

後者は自社側で複製と公衆送信を行うことになり、投稿者の許諾が必要になる場面です。著作権法の複製権と公衆送信権はe-Gov法令検索の著作権法の第二十一条と第二十三条に置かれています。

プラットフォーム規約の側からも同じ結論になります。Xの利用規約は、ユーザーが本サービス上または本サービスを通じて投稿するコンテンツについて、本契約で付与された権利を付与するために必要なすべての権利、ライセンス、同意、許可、権限を有している、または取得していることを表明し、保証するものとすると定めています。規約本文はX利用規約で確認できます。他人のUGCを自社アカウントから出すとき、この表明を自社の名前で行っていることになります。

許諾を依頼するときは、依頼文に使い方を具体的に書きます。「素敵なお写真なので使わせてください」だけでは、投稿者が想定した範囲と企業の使い方がずれます。依頼文に入れておく項目は次のとおりです。

  • 使う場所(公式アカウント名、広告に転用する可能性の有無)
  • 使う期間と、取り下げを申し出る連絡先
  • クレジット表記の形式(アカウント名を出すか、出さないか)
  • 加工の有無(トリミング、文字入れ、色調整)
  • 他の人が写っている場合、その人の同意を投稿者が得ているかの確認

最後の項目は見落とされがちです。投稿者本人が許諾しても、その写真に写っている別の人の肖像権までは投稿者が処理できません。

UGCを施策として設計するときの全体像はUGCマーケティング企業活用事例とUGCマーケティングの収集・運用方法で整理しています。

インフルエンサーに制作を依頼する場合は、成果物の著作権と肖像の利用範囲を契約で決めておく必要があり、考え方はインフルエンサーマーケティングの進め方にまとめています。

引用として成立させる条件と、引用では足りない場面

引用とは、著作権法第三十二条に定められた権利制限規定のひとつで、公表された著作物を、公正な慣行に合致し、かつ引用の目的上正当な範囲内で利用することを認める仕組みです。

著作権法第三十二条第一項は、公表された著作物は引用して利用することができるとしたうえで、その引用は公正な慣行に合致するものであり、かつ報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければならないと定めています。

あわせて第四十八条は、第三十二条により著作物を複製する場合などについて、その出所を、複製または利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により明示しなければならないと定めています。条文はe-Gov法令検索の著作権法で確認できます。

この二つの条文から、投稿前に見るべき点が導けます。

  • 引用する対象がすでに公表されているものか
  • 自社の文章が主で、引用部分が従の関係になっているか
  • 引用部分と自社の文章が、見た目で区別できるか
  • 出所(作品名、著作者名、掲載場所)を示しているか
  • 引用する必要が、その投稿の目的から説明できるか

企業SNSで引用に頼りにくいのは、投稿の目的が自社商品の宣伝である場合です。他社の写真や記事の画像を、自社商品をよく見せるために貼るという使い方は、報道・批評・研究といった条文の例示から距離があり、目的上正当な範囲内と説明しにくくなります。

引用に当たるかどうかを社内で議論して結論が出ないときは、その素材を使わない選択が一番コストの低い対処になります。

なお、著作権法は私的使用のための複製を第三十条第一項で認めていますが、その範囲は個人的に、または家庭内その他これに準ずる限られた範囲内での使用とされています。企業アカウントの投稿はこの範囲に入りません。

「個人的に保存した画像だから」という説明は、業務での投稿には使えないと考えてください。

プラットフォーム規約の確認手順|投稿時に自社が何を約束しているか

プラットフォーム規約の確認とは、投稿する行為によって自社がその事業者と結ぶ契約の内容、とくに投稿者が負う保証の範囲と、事業者に与えるライセンスの範囲を読んでおく作業を指します。

各社の規約は、投稿者が他人の権利を侵害しないことを前提に設計されています。YouTubeの利用規約は、権利所有者から許諾を得ている、または法的な権限がある場合を除いて、第三者の知的所有権を含むコンテンツは投稿できないとし、投稿するコンテンツに法的な責任を負うのは投稿者だと定めています。さらに、コンテンツを提供することで、YouTubeに対して世界的、非独占的、サブライセンスおよび譲渡可能な無償ライセンスを付与するとも書かれています。規約本文はYouTube利用規約で読めます。

プラットフォーム 規約上で投稿者が負う主な内容 参照先
YouTube 第三者の知的所有権を含むコンテンツは許諾がなければ投稿できず、投稿内容の法的責任は投稿者が負う YouTube利用規約
X 必要な権利・ライセンス・同意・許可を有しているか取得していることを表明し保証する X利用規約
TikTok 他者の知的財産権やプライバシー上の権利を侵害する内容の投稿を禁止し、事業・団体を代表して利用する場合は当該団体が法的・金銭的責任を負う TikTokサービス規約

TikTokのサービス規約には、企業アカウントの担当者が読んでおくべき条項があります。

事業または団体を代表して本サービスにアクセスし利用する場合、本規約における「お客様」には当該事業または団体が含まれ、その事業または団体は、従業員や代理人、請負業者等がアカウントにアクセスし使用することに対して法的かつ金銭的に責任を負うと定められています。

担当者個人の判断で投稿した内容であっても、責任の所在は会社側に置かれるという設計です。

規約は改定されます。この記事で触れた内容も、読んだ時点の版に基づくものです。運用ルールを作るときは、規約の該当箇所を丸ごと転記するのではなく、確認した日付と参照したページのURLを添えて社内文書に残し、定期的に読み直す担当を決めておくほうが実務に耐えます。

Instagramなど本文で引用していないサービスについても、同じ手順で各社の公式規約本文を自社で確認してください。

生成AIで作った素材を企業アカウントで使うときの確認手順

生成AI素材の確認とは、生成に使ったツールの利用規約上の商用利用条件と、生成された表現が既存の著作物や実在の人物に似ていないかという二つの側面を、投稿前に別々に見る作業を指します。

文化庁は、生成AIと著作権の関係について整理した「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)と、その解説資料である「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月31日)を公開しています。関連資料は文化庁のAIと著作権についてのページにまとまっています。同ページでは、生成AIと著作権の関係に関する判例及び裁判例の蓄積がないという現状を踏まえて考え方を整理したと説明されています。

企業SNSの運用者としては、条文解釈の議論に踏み込む前に、手を動かして確認できる点から押さえるのが現実的です。まずツールの利用規約で商用利用が認められているか、生成物の権利がどう扱われるかを読みます。

次に、生成された画像に実在の人物や既存のキャラクターに似た表現が含まれていないかを目で見て確認します。似ていると感じた時点でその素材を使わない、という運用にしておくと、判断に時間を使わずに済みます。

記録の残し方も決めておきます。使用したツール名、生成した日付、入力した指示文を素材と一緒に保管しておけば、後から問い合わせを受けたときに経緯を説明できます。

生成AIを使った投稿かどうかを表示するかは、業種や媒体によって判断が分かれる論点で、社内ルールとして先に決めておくほうが担当者は動きやすくなります。

権利チェックを投稿フローに組み込む|担当・記録・保管を決める

投稿フローへの組み込みとは、権利確認を担当者の心がけではなく、企画から保管までの各工程に紐づいた作業として定義し、誰が何を見て何を残すかを決めておくことを指します。

権利確認が抜けるのは、担当者の知識不足だけが原因ではありません。確認する人と作る人が同じで、締切前にまとめて処理される構造になっていることのほうが多いものです。工程ごとに確認者と記録を決めておくと、担当者が変わっても同じ水準を保てます。

工程 主に見る人 確認する内容 残す記録
企画 企画担当 使う素材の種類、被写体に人が入るか、音楽を使うか 企画メモに素材の予定を記載
素材の収集 制作担当 入手経路、許諾の有無、ライセンス種別 素材ごとの出所一覧
制作 制作担当 加工の範囲が許諾内か、写り込みの扱い 加工前後のデータ
投稿前レビュー 制作していない第三者 出所一覧と完成物の突き合わせ、規約上の禁止事項 レビュー実施日と確認者名
投稿 アカウント管理者 投稿先アカウント、公開範囲、予約設定 投稿URLと投稿日時
保管 アカウント管理者 同意書・許諾やり取りの保管場所 保管先と保管期限

仮の例として、投稿前レビューを制作していない人が担当する運用を考えてみます。作った本人は素材の出所を覚えているつもりでも、第三者から「この写真はどこから来ましたか」と聞かれると、答えられない素材が見つかります。この一往復が、公開後に気づく事故を前に倒す仕組みになります。

ルールを文書に落とす段階では、企業SNS運用ガイドラインの作り方で扱っている承認フローの設計と合わせて考えると、権利確認だけが浮いた手順になりません。

外部パートナーに運用を任せている場合は、どちらが権利確認をするのかを契約で決めておく必要があり、よくある失敗の型はSNS運用外注の失敗事例と原因にまとめています。

ショート動画のように素材点数が増える形式では、確認の単位が動画単位ではなくカット単位になるため、ショート動画マーケティングの企業活用で触れている制作体制とセットで設計してください。

指摘を受けたときの初動|止める・記録する・相談する

権利侵害の指摘を受けたときの初動とは、公開の継続を止める判断、事実関係を記録する作業、社外の専門家に相談する判断を、それぞれ別の担当者が別の時間軸で行えるように決めておくことを指します。

指摘は、権利者本人から届くこともあれば、第三者からの問い合わせやプラットフォームからの通知として届くこともあります。

YouTubeの利用規約には、著作権者が自分の著作権が侵害されていると考える場合に通知する仕組みと、侵害行為を繰り返すユーザーについては状況に応じてサービスへのアクセスを解除することがあると書かれています。

Xの利用規約にも著作権侵害報告フォームの案内があります。つまり、対応を放置するとアカウント自体を失う可能性があります。

初動は順番を決めておきます。

  1. 該当投稿の公開を止める(削除ではなく非公開や限定公開から検討する)
  2. 指摘の全文、受領日時、送信元をそのまま保存する
  3. その素材の出所一覧と許諾のやり取りを集める
  4. 社内で事実関係だけを整理し、法的な評価は書かない
  5. 弁護士または顧問先へ相談し、返答の方針を決めてから連絡する

四番目が重要です。社内メモに「これは侵害だと思われる」と評価を書いてしまうと、後の交渉で不利に働くことがあります。担当者が集めるのは事実であって、結論ではありません。

相手方への返答も、方針が決まる前に個別に返さないよう、窓口を一本化しておいてください。

指摘が拡散して批判が集まった場合の対応手順は、権利問題そのものとは別に整理が必要です。声明の出し方や社内連絡の順番については企業SNS炎上を防ぐ対策と対応マニュアルにまとめています。

なお著作権法には刑事罰の規定も置かれています(第百十九条)。条文はe-Gov法令検索の著作権法で確認できます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 出典を書けば他社の画像を投稿に使ってよいのでしょうか。
出所の明示は、著作権法第四十八条が引用などの場合に求めている義務であって、それ自体が利用を許す規定ではありません。引用として成立するには第三十二条の要件を満たす必要があり、宣伝目的の投稿では成立しにくくなります。出典を書いたかどうかではなく、その利用に許諾または権利制限規定の根拠があるかどうかで判断してください。条文はe-Gov法令検索の著作権法で読めます。
Q2. アプリに入っている音源を使えば、企業アカウントでも手続きは不要ですか。
サービス内で使えることと、自社の他の媒体でも使えることは別です。TikTokのサービス規約は、本サービスを通じて利用できる音声および音楽作品についていかなる権利も許諾されないと定めています。またJASRACの案内では、特定の企業・団体や商品、サービスを宣伝する動画には広告目的複製の手続きが必要とされています。宣伝目的かどうかを先に判定してください。
Q3. 社員が自分のスマートフォンで撮った写真は、会社の写真として扱えますか。
撮影に使った機材ではなく、職務著作の要件を満たすかどうかで決まります。著作権法第十五条第一項は、法人等の発意に基づき業務に従事する者が職務上作成し、法人等の名義で公表する著作物について、別段の定めがない限り法人等を著作者とすると定めています。私的に撮った写真を後から業務に流用する場合はこの要件から外れる可能性があるため、撮影の位置づけを記録に残しておいてください。
Q4. 店内のお客様が写った写真は、顔がはっきり写っていなければ投稿してよいですか。
顔の写り方だけで判断できる論点ではありません。服装、持ち物、店内の位置などから個人が特定できる場合があり、来店という事実自体が本人にとって知られたくない情報であることもあります。個人情報保護法第二条は、他の情報と容易に照合できて特定の個人を識別できるものも個人情報に含めています。撮影時に声をかけて同意を得るか、人が写らない構図に変えるほうが、後から争点になりにくい進め方です。
Q5. 街頭で撮影した動画に他社の看板や屋外の彫刻が入ってしまいました。
著作権法第三十条の二は、撮影対象に付随して写り込んだ著作物が作成伝達物のなかで軽微な構成部分となる場合に、正当な範囲内での利用を認めています。屋外に恒常的に設置された美術の著作物や建築の著作物については第四十六条に別の規定があり、四つの除外が定められています。写り込んだ対象を主役にしていないか、拡大や切り出しで強調していないかを確認し、判断が分かれる場合は弁護士に相談してください。
Q6. 権利確認の記録は、どのくらいの期間残せばよいですか。
法律で一律の保存期間が決まっているわけではありません。実務上は、投稿を公開している期間中はもちろん、削除した後も一定期間は残しておくと、後から問い合わせを受けたときに経緯を説明できます。同意を取るときに保管期間を本人へ伝えておく運用にすれば、社内の保存ルールと本人への説明が一致します。保管場所と担当者を決め、アカウントの引き継ぎ時に一緒に渡してください。

まとめ

企業SNS投稿の権利確認は、三系統の権利を分けて見ることと、確認した事実を記録として残すことの二つに集約されます。この記事で扱った手順を、投稿フローに組み込める形で整理しておきます。

  • 著作権は、誰の、どの支分権を使うのかを先に決めてから許諾を確認する
  • 写真は入手経路ごとに権利の所在が変わるため、経路の記録を素材と一緒に保管する
  • 写り込みは、その対象を主役にしていないか、強調していないかを見る
  • 肖像権とパブリシティ権は条文がないぶん、同意の範囲を書面で具体化する
  • 音楽は、楽曲の権利と音源の権利を分け、宣伝目的の動画かどうかを先に判定する
  • UGCは、共有機能を使う場合と素材を取り出す場合を分けて考える
  • プラットフォーム規約では、投稿時に自社が何を表明しているかを読んでおく
  • 指摘を受けたら、止めて、記録して、評価を書かずに専門家へ相談する

ここまでの内容は法律の一般的な解説であり、個別の投稿についての判断を示すものではありません。自社の事案について結論が必要な場面では、弁護士など専門家に相談してください。制度の基礎知識や社内研修の教材は文化庁の著作権を学ぶのページや文化庁の著作権Q&Aが使えます。

運用体制そのものを見直したい、社内に確認できる人がいないので投稿が止まっている、といった状態であれば、現在のフローを前提にどこから手を入れるかを一緒に整理できます。

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