介護施設のInstagramを任されたものの、家族に向けて何を載せればよいのか、採用の投稿はどこまで書いてよいのか、利用者の写真は誰の同意をどう取ればよいのかで、判断に迷う場面があるはずです。行事やレクリエーションの様子は伝えたい一方で、写っているのは介護を受けている本人であり、同意の取り方や、広告として読まれたときの表示の正しさまで気を配る必要があります。
結論から言うと、介護施設のInstagramは「家族向け・採用向け・地域向けのどれに答える投稿か」を先に決め、利用者が写る素材は投稿の種類ごとに同意と確認の項目を表にしておく運用が現実的です。写真は、個人を識別できるものであれば個人情報に当たり、ホームページや機関誌、施設内の展示に載せる場合は原則として本人の同意が必要だと、公式のQ&Aに示されています。同意を誰から、どの方法で得るかを決めずに、行事のたびに写真を載せる運用は避けます。
この記事は、特別養護老人ホーム、デイサービス、有料老人ホームなどを運営し、Instagramで家族や求職者、地域に施設の様子を伝えたい事業者と担当者に向けて書いています。個人情報の扱いは、個人情報保護委員会と厚生労働省による医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンスと同ガイダンスのQ&A(事例集)、有料老人ホームの表示は消費者庁の有料老人ホームに関する不当な表示のページ、求人の表示は厚生労働省の労働者の募集広告の表示についてのページを、2026年10月17日に実際に開いて確認できた記載に限って使っています。法令の適用は施設の種別や個別の事情で変わるため、判断に迷う場合は弁護士、行政書士、自治体の担当窓口などの専門家にご確認ください。文中の点検表や同意項目の記入例は、手順を説明するための「仮の例」であり、実在の施設や利用者の話ではありません。
最初に決めること|家族向け・採用向け・地域向けのどれに答えるか
介護施設のInstagramで最初に決めることは、投稿を読む相手を「入所や利用を検討する家族」「入所中・利用中の利用者の家族」「求職者」「地域の人」のどれに置くかであり、相手が変わると、載せる情報も、気をつける個人情報や表示の範囲も変わります。
介護施設のアカウントを見る人は、立場ごとに知りたいことが違います。入所や利用を検討している家族は、職員の人柄や一日の過ごし方、施設の雰囲気を知りたいはずです。求職者は、働く環境や仕事の内容を知りたいでしょう。地域の人は、行事や地域との交流の様子に関心を持ちます。すべてを一つの投稿で満たそうとすると、どの相手にも届かない内容になりがちです。
そこで、アカウントの主な読者を一つ決め、副の読者を一つまで添える形にします。入所中の利用者の家族への連絡事項や、個別の様子の報告は、Instagramではなく、施設がもともと使っている連絡手段に分けます。公開の場所に載せた内容は誰でも見られるため、体調や介護の状況、個別の生活の様子は載せない前提で設計します。
アカウントの役割は一文で書き出しておきます。仮の例として「施設の日常の雰囲気と職員の考え方を、入所や利用を検討する家族に伝える」と決めれば、投稿のたびにその役割に合うかで判断できます。役割が決まっていないと、行事の写真ばかりが並び、同意の確認だけが担当者の負担として増えていきます。
家族向け・採用向け・地域向けの投稿の型
介護施設の投稿の型とは、読者の問いごとに一つずつ答える投稿の形であり、家族向けは「どんな一日か・どんな職員か」、採用向けは「どんな仕事か・どんな条件か」、地域向けは「どんな行事・交流があるか」に答える型を指します。
型を先に決めておくと、毎回の投稿で悩む時間が減り、確認すべき項目も型ごとに固定できます。次の表は、型ごとの読者の問いと、利用者が写らなくても作れる素材、投稿前に確認する点を整理した、編集部の整理です。
| 投稿の型 | 読者の問い | 利用者が写らない素材の例 | 投稿前に確認する点 |
|---|---|---|---|
| 一日の流れの紹介(家族向け) | どんな一日を過ごすのか | 時間割の図、食堂や居室の無人の様子、献立の写真 | 掲示物やホワイトボードに利用者名が写り込んでいないか |
| 職員の考え方の紹介(家族向け) | どんな姿勢で関わる職員か | 職員の手元、職員本人の写真(本人の同意を得たもの) | 職員本人の同意があるか、利用者の発言を引用していないか |
| 仕事内容と募集条件(採用向け) | どんな仕事で、どんな条件か | 職場の無人の写真、仕事の流れの図 | 募集主の名称、業務内容、就業場所、賃金などの記載が足りているか |
| 行事・地域交流の紹介(地域向け) | どんな行事や交流があるか | 飾り付け、会場の準備の様子、参加者の後ろ姿を含まない全景 | 参加者が特定できないか、地域の参加者の同意があるか |
| よくある質問への回答(家族向け) | 見学や相談はどう進むか | 文字中心の画像、案内図 | 料金や条件が最新の内容と一致しているか |
表の型は、いずれも利用者の顔や氏名を出さずに作れます。この型を軸にすると、同意を取る対象を職員などに絞れて、運用の負担が軽くなります。利用者が写る投稿は、同意が取れた範囲で行う特別な投稿として位置づけます。学習塾向けに同じ考え方を整理した未成年の写真と個人情報の扱いをまとめた学習塾の記事もありますが、介護施設は同意を誰から得るかの考え方が異なるため、次の節で整理します。
利用者の写真の扱い|公式Q&Aが示す「原則として本人の同意」
利用者の写真の扱いとは、個人を識別できる写真は個人情報に当たるため、ホームページや施設内の展示などで第三者の閲覧に供する場合は、原則として本人の同意を得る必要があるという、公式Q&Aに示された考え方を運用に落とすことです。
個人情報保護委員会と厚生労働省の医療・介護関係事業者向けガイダンスのQ&A(事例集)のQ4-15は、ホームページや機関誌に行事などでの利用者の写真を載せる場合に本人の同意が必要かを問うています。回答は、写真も個人を識別できるものであれば個人情報に当たるとしたうえで、ホームページや機関誌への掲載、施設内への展示などを通じて第三者の閲覧に供する際は、原則として本人の同意を得る必要がある、というものです。このQ&AはInstagramを名指ししたものではないため、Instagramへの投稿には、公開の場に載せる点が共通するものとして、編集部が当てはめて考えます。
ここで大事なのは、顔が写っているかだけで判断しないことです。氏名の入った持ち物、居室の名札、特徴のある装い、掲示物などが組み合わさって、見た人がその利用者だと分かるなら、識別できる写真として扱うのが安全です。同じQ&Aのページには、氏名は個人を識別できる情報であり個人情報に該当するとの回答(Q3-10)もあり、行事の席札や名札、飾り付けの短冊の氏名が写り込む場合も同じ考え方で点検します。
同意の取り方について、同じQ&AのQ3-1は、医療機関等については同意を得る方法に法令上の規定はなく、文書のほか口頭や電話による方法も認められるとし、同意を求める内容や緊急性などを勘案して場面に適した方法で得るべきだとしています。ただし、これは医療機関等の場合として書かれた回答です。介護施設の写真掲載の同意は、あとから「いつ、誰が、何の範囲で同意したか」を説明できるよう、書面で記録を残す形を編集部としては勧めます。
判断が難しい利用者の場合|誰から同意を得るか
判断が難しい利用者の同意とは、利用者本人が同意の結果を判断できる能力を持たない場合に、誰から同意を得るかを事前に決めておくことで、ガイダンスは、判断できる能力を有していないなどの場合は親権者や法定代理人等から同意を得る必要があると書いています。
前掲のガイダンスの本文(令和8年4月一部改正のPDF)は、個人情報の取扱いに関して同意したことによって生ずる結果について、未成年者、成年被後見人、被保佐人及び被補助人が判断できる能力を有していないなどの場合は、親権者や法定代理人等から同意を得る必要があると書いています。介護施設の利用者は成人が中心のため、この文言に直接当てはまるのは、成年後見などの制度を利用している場合や、判断できる能力を有していないと考えられる場合です。
同じガイダンスは、本人の意思を明確に確認できない状態の利用者について、意識の回復にあわせて速やかに本人へ説明し同意を得るものとし、利用者の理解力や判断力に応じて、可能な限り本人に通知し同意を得るよう努めることが重要だとも書いています。これは医療・介護サービスの提供に関する箇所の記述であり、写真の掲載にそのまま当てはめた記載ではありません。この記事で開いたガイダンスとQ&Aの範囲では、成年後見等を利用していない利用者について、家族の同意で足りると明示した記述は見つけられませんでした。
そのため、判断が難しい利用者の写真は、次のように段階を分けて考えます。これは編集部の整理であり、法令の解釈を示すものではありません。
| 利用者の状況 | 同意を得る相手の考え方 | 根拠の区分 |
|---|---|---|
| 本人が内容を理解し、意思を示せる | 本人から得る。家族への事前の共有は、施設の方針として別に決める | 公式Q&Aは原則として本人の同意(Q4-15) |
| 成年後見などを利用している | 法定代理人等から得る必要がある場合に当たるため、後見人等に確認する | ガイダンスの本文に法定代理人等から同意を得る必要があるとの記載 |
| 意思を明確に確認できない、または理解力が十分でない | 本人の理解力に応じて説明しつつ、同意を誰から得るかは自治体や専門家に確認してから決める | ガイダンスの記載は医療・介護サービス提供の文脈。写真への当てはめは編集部の整理 |
| 判断が曖昧、または確認できていない | 写真を載せない。識別できない素材に切り替える | 編集部の整理 |
表の最後の行が運用の要です。同意の有無が確認できない利用者は、載せない側に倒す判断を、あらかじめ施設の方針にしておきます。迷った写真を担当者が個別に判断する運用は、見落としの原因になります。
投稿の種類ごとの同意・確認項目|この記事の整理表
投稿の種類ごとの同意・確認項目とは、写真、動画、氏名、行事の全景、職員の写真などの素材ごとに、誰の同意が要るか、何を確認してから載せるかを一覧にした社内の表であり、同意の範囲と公開の可否を投稿前に照合するために使います。
次の表は、公式の記載で裏付けられる項目と、編集部が当てはめた項目を、列で分けて示したものです。公式の記載は、前の節で触れたQ&AとガイダンスとQ3-10(氏名)に限っています。
| 素材 | 同意を得る相手 | 確認してから載せる項目 | 根拠の区分 |
|---|---|---|---|
| 利用者の顔が分かる写真・動画 | 本人(判断が難しい場合は前の表のとおり) | 掲載先(Instagram)と目的、写真か動画か、掲載の期間 | 写真が個人情報に当たることと原則として本人の同意は公式Q&A。掲載先や期間を同意書に書く点は編集部の整理 |
| 利用者の氏名・席札・名札 | 本人 | 写り込みの有無、投稿の文面に氏名がないか | 氏名が個人情報に当たることは公式Q&A(Q3-10)。写り込み点検は編集部の整理 |
| 後ろ姿・手元だけの写真 | 特定できるかで判断 | 衣服、持ち物、居室、周囲の掲示物で特定できないか | 識別できるものが個人情報に当たることは公式Q&A。点検の方法は編集部の整理 |
| 行事の全景(多数が写る) | 写る人ごと。家族や来訪者が写る場合はその人も対象 | 来訪者への事前の案内、写る範囲の限定 | 編集部の整理 |
| 職員の写真 | 職員本人 | 本人の同意、退職後の取り扱いの方針 | 編集部の整理 |
| 利用者に関する出来事の文章 | 本人 | 体調、介護の状況、家族関係などが読み取れないか | 編集部の整理。投稿文は載せない方針を推奨 |
仮の例で記入の流れを示します。ある施設の夏祭りの投稿で、会場の全景に利用者数名が写っている写真を使いたいとします。表の行にあてはめると、写る利用者ごとの同意が必要になり、同意が確認できない利用者が一人でもいれば、その写真は使えません。そこで、会場の飾り付けと、準備をする職員の手元の写真に切り替え、職員本人の同意だけを確認して投稿します。この例のように、型を無人の素材へ置き換える判断をあらかじめ決めておくと、迷う時間が減ります。
写真の著作権や肖像権の確認手順は、企業SNS投稿の写真や音楽の権利を確かめる手順をまとめた記事も参考になります。同意書の様式や運用の体制づくりに不安がある場合は、下のリンクからご相談ください。
採用向けの投稿で守ること|求人の表示と職員の写真
採用向けの投稿で守ることとは、求人として投稿する内容に虚偽や誤解を生じさせる表示を入れず、募集主の名称、住所、連絡先、業務内容、就業場所、賃金を分かるように記載することです。
厚生労働省の労働者の募集広告の表示についてのページは、職業安定法第5条の4により、広告等で求人や募集に関する情報を提供する際は、その情報について虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならないと案内しています。同ページは、広告に記載する事項として、募集主の氏名(又は名称)、住所、連絡先、業務内容、就業場所、賃金を挙げています。また、Q&Aには、これらの事項を省いて募集要項へのリンクのみを載せる方法は、求人であることすら誤解されるおそれがあるため認められないとの趣旨の記載があります。
この記載から、Instagramの採用投稿では、画像だけで雰囲気を伝えて、条件は外部ページに任せる形を取る場合も、求人として出す以上は、投稿の文面とリンク先の内容が一致しているかを点検する必要があります。どの立場で募集するかによって適用の仕方が変わり得るため、自施設の投稿がどの区分に当たるかは、ハローワークや労働局などの窓口で確認してください。
職員の写真は、採用向けの投稿で使いやすい素材ですが、職員本人の同意が前提です。同意書には、掲載する写真の範囲、掲載する期間の考え方、退職後の扱い、取り下げの申し出の窓口を書いておきます。退職後の扱いは法令で一律に決まるものではないため、施設の方針として明記しておくと、のちの行き違いを避けられます。職員の個人SNSの利用と施設の投稿との線引きは、社員の個人SNS利用ルールの作り方をまとめた記事で整理しています。
採用投稿でも、実績や働きやすさを示す表現には根拠が必要です。確認できない数字や、他の施設と比べた優位性の言い切りは載せず、実際の仕事の流れや職員の考え方を、事実の範囲で伝えるにとどめます。
広告表示と誇大表現の注意点|有料老人ホームの告示と景品表示法
広告表示の注意点とは、施設の設備、介護サービス、職員の数、費用などを投稿で紹介するときに、実際と異なる誤解を与えないよう、制約や条件を明りょうに書くことで、有料老人ホームは「有料老人ホームに関する不当な表示」という告示が適用されます。
消費者庁の有料老人ホームに関する不当な表示のページは、この告示を景品表示法に基づくものとして案内し、土地又は建物、施設又は設備、居室の利用、医療機関との協力関係、介護サービス、介護職員等の数、管理費等の七つの分野を挙げています。告示の本文(平成16年公正取引委員会告示第3号)は、制約があるのにそれが明りょうに記載されていない表示を不当表示として指定しています。備考では、この告示の「有料老人ホーム」を、老人福祉法第29条第1項に規定する有料老人ホームと定めています。
次の表は、告示本文の内容を、Instagramの投稿で起きやすい場面に結びつけた整理です。告示の内容は本文の記載に沿って要約し、投稿の場面は編集部の整理です。
| 分野(告示の見出し) | 告示が明りょうな記載を求める内容の例 | 投稿で気をつける場面(編集部の整理) |
|---|---|---|
| 土地又は建物 | 土地や建物が当該有料老人ホームの所有でない場合、そのこと | 外観の写真に所有関係の説明がない |
| 施設又は設備 | 敷地・建物内にない、利用のたびに費用がかかる、専用でないなどの場合、そのこと | 共用の浴室や機能訓練室を紹介する投稿 |
| 居室の利用 | 住み替えがある場合や、終身にわたって居住や介護サービスを受けられない場合があること | 「ずっと安心して暮らせる」と読める表現 |
| 医療機関との協力関係 | 協力の内容 | 「病院と連携」とだけ書く投稿 |
| 介護サービス | 当該ホームが提供するものではない場合のそのこと、保険給付の対象とならないサービスの内容と費用 | サービスの紹介で、提供主体や費用を省く投稿 |
| 介護職員等の数 | 常勤換算方法による数、夜間における最少の数、介護に関する資格を有する職員の数(常勤・非常勤の別) | 手厚さを示す職員数の紹介 |
| 管理費等 | 費用の内訳 | 月額費用を一つの金額だけで紹介する投稿 |
特別養護老人ホームやデイサービスなど、告示の定義に当たらない施設でも(種別ごとの適用は個別に確認が必要です)、表示が実際より著しく優良だと一般消費者に示す表示(優良誤認表示)や、取引条件について実際より著しく有利だと誤認される表示(有利誤認表示)に当たれば、景品表示法の規定が適用されます。消費者庁の表示規制の概要は、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求められることがあると案内しています。自施設が告示の定義に当たるかが分からない場合は、自治体の担当窓口や専門家に確認してください。
投稿の文面では、「満足度が高い」「手厚い介護」など、根拠を示せない評価語や、他の施設より優れていると読める言い切りを避けます。数字を載せるときは、自施設で確認できた数字だけを、算出の条件とあわせて書きます。確認できない数字は、表示から外します。口コミや紹介を投稿に使う場合の広告表示は、企業SNSのPR表記の要否をまとめた記事も参照してください。
家族向け・地域向けの投稿とコメントの運用
家族向け・地域向けの投稿の運用とは、見学や相談の窓口を投稿から分かるようにし、コメントやDMで利用者個人の状況に関する質問が来たときの対応先をあらかじめ決めておくことで、公開の場で個別の事情を扱わないようにする運用です。
家族向けの投稿では、見学や相談の申込先を、施設の電話や問い合わせフォームなど、本人確認ができる手段に案内します。コメント欄に「うちの母の様子はどうですか」といった個別の質問が来る可能性があるため、利用者の状況に関する質問には公開の場で答えない方針を決め、対応先の窓口へ案内する定型の返信を用意しておきます。仮の例として「個別のご様子のお問い合わせは、お電話または施設の窓口でお受けしています」といった文面です。
地域向けの投稿では、地域のボランティアや来訪者が行事に参加する場合があります。写り込む可能性のある人に、事前に写真の撮影と投稿の可能性を案内し、写りたくない人が申し出られる方法を決めておきます。返信の基準、担当、エスカレーションの考え方は、企業SNSのコメント・DM対応ルールの作り方をまとめた記事に整理しています。
同意の取り消しの申し出があった場合の流れも決めます。受付の記録、対象の投稿の特定、非公開または削除、完了の連絡、再発防止の記録の順に進め、窓口は担当者個人でなく施設の窓口にします。いったん公開した内容を、第三者が保存している可能性は残るため、同意書の段階で、公開した内容を施設で完全には回収できない場合があることを伝えておくと、誤解を避けられます。これは法令の定めではなく、説明を誠実にするための編集部の提案です。
投稿前の点検表|同意・写り込み・表示・求人の確認
投稿前の点検表とは、同意、写り込み、表示、求人の記載を、公開の前に一つずつ確かめる社内の様式であり、この記事では、公式で裏付けられる確認と編集部の整理を分けて記録できるようにしています。
これまでの内容を、投稿前の点検表にまとめます。担当者が一人で運用する施設でも、投稿ごとに表を埋めてから公開する習慣をつけると、確認漏れを減らせます。確認の根拠として参照する公式ページも併記しています。
| 確認する点 | 確認の内容 | 参照する公式ページ |
|---|---|---|
| 利用者が識別できる素材はないか | 顔、氏名、名札、席札、掲示物、持ち物で特定できないか | ガイダンスのQ&A(事例集) |
| 本人の同意を確認できているか | 掲載先、素材の種類、期間を含む同意の記録があるか | ガイダンスのQ&A(事例集) |
| 同意を得る相手は正しいか | 判断が難しい利用者の同意の相手を、方針どおりに確認したか | 医療・介護関係事業者向けガイダンス |
| 施設・サービス・費用の表示に制約の書き漏れはないか | 提供主体、費用の内訳、職員数の条件などを書いているか | 有料老人ホームに関する不当な表示 |
| 評価語・優位性の言い切りに根拠があるか | 根拠資料を示せない表現を外したか | 表示規制の概要 |
| 求人の記載事項は足りているか | 募集主の名称、住所、連絡先、業務内容、就業場所、賃金 | 労働者の募集広告の表示について |
仮の例として、デイサービスの「午後のレクリエーション」を紹介する投稿を点検します。使いたい写真には、机の上の作品と、壁の掲示が写っていました。掲示に利用者の名前が読めることが分かったため、撮り直しにしました。次に、文面の「手厚い見守りで安心」という一文は、根拠を示せないため、「午後の時間帯の過ごし方を紹介します」に書き換えました。最後に、見学の案内先として施設の電話番号を載せて、公開の判断をしています。点検表は、公開を止めるための関門ではなく、気づきを記録して次の担当者に残すための道具です。
運用体制と効果の見方|担当者を一人にしない
介護施設のInstagramの運用体制とは、投稿を作る人、確認する人、同意を管理する人、アカウントの権限を持つ人を分け、担当者が代わっても運用が続くようにする仕組みであり、効果の見方は、投稿の目的ごとに見学の問い合わせや応募の動きなど、施設が確認できる事実で判断します。
小さな施設では、一人の職員が撮影から投稿までを担いがちです。しかし、写り込みの見落としや同意の確認漏れは、一人で作業するほど起こりやすくなります。少なくとも「作る人」と「確認する人」を分け、人手が足りない場合は、同意の管理表と点検表を共有して、公開前に別の職員が表を確認するだけでも、見落としは減らせます。アカウントの権限管理と担当交代時の引き継ぎは、SNSアカウントの権限管理と引き継ぎ手順をまとめた記事で整理しています。
効果の見方は、投稿の型ごとに目的を分けて考えます。家族向けの投稿なら、見学や相談の問い合わせにつながったか、採用向けの投稿なら、応募の問い合わせにつながったかを、施設の窓口で記録できる範囲で見ます。数字の目標は、施設の状況に合わせて自分たちで決めるもので、この記事は特定の成果を約束しません。指標の選び方と計測の考え方は、法人Instagramの指標の選び方と計測の手順をまとめた記事が参考になります。
運用を外部に任せる場合は、写真や氏名の扱い、同意の確認を誰が担当するか、投稿前の確認者、アカウントの権限をどちらが持つかを、契約や取り決めで確認します。委託する際の個人情報の安全管理は、SNS運用代行と個人情報保護法をまとめた記事で整理しています。株式会社S.Lineでは、企業のSNS運用について、運用の体制づくりや、委託先との役割分担のご相談を受け付けています。
よくある質問(FAQ)
- Q1. 利用者の顔が写っていない写真なら、同意なしで載せてもよいですか。
- 顔が写っていなくても、氏名の入った名札や席札、特徴のある装いや掲示物から、見た人が誰か分かる場合があります。ガイダンスのQ&Aは、個人を識別できる写真は個人情報に当たるとしています(Q&A(事例集))。顔の有無でなく、特定できるかで判断し、迷う場合は載せない側に倒してください。
- Q2. 家族が「載せてよい」と言えば、利用者本人の同意は不要ですか。
- 公式Q&Aは、原則として本人の同意が必要だとしています(Q4-15)。ガイダンスの本文が親権者や法定代理人等から同意を得る必要があるとするのは、判断できる能力を有していない未成年者、成年被後見人、被保佐人及び被補助人などの場合です(ガイダンスPDF)。この記事で開いた範囲では、それ以外の利用者について家族の同意で足りると明示した記述は見つけられませんでした。判断に迷う場合は、自治体や専門家に確認してください。
- Q3. 同意は口頭で取れば足りますか。
- 公式Q&AのQ3-1は、医療機関等について、同意を得る方法に法令上の規定はなく、文書のほか口頭や電話による方法も認められるとしています。ただし、あとから同意の範囲を説明できるよう、介護施設の写真の同意は書面に残す運用を編集部としては勧めます。
- Q4. 採用の投稿で、募集要項へのリンクだけ載せてもよいですか。
- 厚生労働省のページのQ&Aには、募集主の名称、住所、連絡先、業務内容、就業場所、賃金を省いて募集要項のリンクのみを載せる方法は、求人であることすら誤解されるおそれがあるため認められないとの趣旨の記載があります(労働者の募集広告の表示について)。
- Q5. 「手厚い介護」「安心の施設」といった表現は使えますか。
- 根拠を示せない評価語は避けるのが安全です。消費者庁は、優良誤認表示などの疑いがある場合に、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることがあると案内しています(表示規制の概要)。評価語より、実際の取り組みの内容を事実の範囲で書いてください。
- Q6. 特別養護老人ホームやデイサービスにも、有料老人ホームの告示は適用されますか。
- 告示の備考は、「有料老人ホーム」を老人福祉法第29条第1項に規定する有料老人ホームとしています(告示)。該当しない施設でも、優良誤認や有利誤認に当たる表示には景品表示法が適用されると、消費者庁のページに書かれています(有料老人ホームに関する不当な表示)。自施設の種別での適用は、自治体の担当窓口に確認してください。
まとめ|投稿の型を決め、同意と表示を投稿前に確かめる
介護施設のInstagramは、家族向け・採用向け・地域向けの投稿の型を先に決めると、利用者の顔や氏名を出さずに運用できます。そのうえで、利用者が写る投稿は、写真が個人情報に当たること、原則として本人の同意が必要なことを前提に、素材ごとの同意と確認の項目を表にして運用します。
判断が難しい利用者については、同意を誰から得るかをあらかじめ決め、確認できない場合は載せない方針にします。採用の投稿は求人の記載事項と文面の一致を、施設や費用の紹介は制約と条件の明記を、公開前に点検します。最初の一歩は、同意書の項目の見直しと、投稿前の点検表を一枚作ることです。様式や体制づくりに不安がある場合は、専門家に確認しながら進め、下のリンクからもご相談いただけます。
