不動産会社のInstagram運用|物件投稿の型と広告表示ルールの確認

📅 公開日: 2026年10月17日🔄 最終更新: 2026年10月16日

不動産会社のInstagramで物件や街の情報を発信したいが、どんな投稿の型を用意すればよいのか、広告のルールにどこまで気をつければよいのかが分からない、という担当者は少なくありません。賃貸仲介でも売買仲介でも管理会社でも、物件に触れる投稿は、ふつうの店舗の商品紹介とは違い、表示の決まりに沿っているかを投稿のたびに確かめる必要があります。

結論から言うと、不動産会社のInstagramは「物件紹介・周辺環境・内見の流れ・よくある質問」の4つの型で投稿を設計し、物件の内容や条件に触れる投稿は広告表示と同じ基準で点検する運用が安全です。確認する軸は、取引態様の明示、成約済み物件を載せ続けないこと(おとり広告)、二重価格や最上級表示などの用語の使い方、写真・動画の扱いの4つです。

この記事は、賃貸仲介・売買仲介・管理を行う不動産会社でInstagramの運用を任された担当者と経営者に向けて書いています。広告の表示ルールは、不動産公正取引協議会連合会が公開している不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則(2022年9月1日付変更)、同連合会のおとり広告ガイドライン、消費者庁の表示規制の概要を、2026年10月16日に実際に開いて確認できた記載に限って使っています。Instagramの機能や数値の仕様は書いていません。規約の最新の内容や自社への当てはめは、所属する公正取引協議会や専門家に確認してください。

目次

最初に決めること|業態ごとに、投稿で答える問いを分ける

不動産会社のInstagramで最初に決めることは、賃貸仲介・売買仲介・管理のどの業務の読者に、どの問いへ答えるアカウントなのかであり、業態が違うと読者の知りたいことも、投稿で気をつける表示も変わります。

賃貸仲介では、部屋を探している人が「その街で暮らすとどうなるか」「内見までに何をすればよいか」を知りたがります。売買仲介では、購入を検討する人が「物件の条件」「周辺の環境」「手続きの流れ」を比べたいと考えます。管理を担う会社では、オーナーや入居者に向けて、日々の管理の考え方や連絡の窓口を伝える場面が中心になります。同じアカウントですべてを扱うと、どの読者にも中途半端になりやすいため、主な読者を一つに決めてから型を選びます。

業態 主な読者 投稿で答える問い 特に確認する表示
賃貸仲介 部屋を探している個人 この街の暮らしやすさ、内見の進め方、契約までの流れ 取引態様(貸主・代理・媒介の別)、賃料などの条件、募集が続いている物件か
売買仲介 購入や売却を検討する個人 物件の条件の読み方、周辺環境、手続きの流れ 取引態様(売主・代理・媒介の別)、価格の比較表示、写真が取引する物件のものか
管理 オーナー、入居者 管理の進め方、問い合わせ窓口、入居中のよくある質問 特定の物件を載せる場合の募集状況、入居者が写り込まないこと

アカウントの役割を一文にしておくと、毎回の投稿で迷いにくくなります。たとえば仮の例として「桜町駅(架空の駅名)周辺で部屋を探す人に、街の暮らしと内見の進め方を伝える」と決めれば、その役割に合わない投稿(遠い地域の物件、募集の終わった物件)を載せない判断ができます。

物件・街の情報を伝える4つの投稿の型

不動産会社の投稿の型とは、読者の判断の段階(探す・比べる・見に行く・疑問を解く)に合わせて、物件紹介・周辺環境・内見の流れ・よくある質問の4つに分けた投稿の形であり、型ごとに確認する表示のポイントが決まります。

4つの型は、読者が物件を決めるまでの順序に沿っています。物件紹介は「比べる」段階、周辺環境は「暮らしを想像する」段階、内見の流れは「見に行く」段階、よくある質問は「疑問を解く」段階に対応します。次の表は、型ごとの内容と、この記事で規約の文言を確認した表示のポイントをまとめたものです。

型 載せる内容 確認する表示のポイント この記事の該当節
物件紹介 間取り、条件、写真、募集状況 取引態様、必要な表示事項、募集が終わった物件の取り下げ、写真が取引する物件か 取引態様、おとり広告、写真の各節
周辺環境 駅までの道、商業施設、公園、街の雰囲気 徒歩の所要時間の計算、施設が現に利用できるか、環境を実際より良く見せていないか 周辺環境の節
内見の流れ 予約から当日の動きまでの手順 入居中の部屋や居住者が写らないこと、案内の対象が実在する募集物件であること 内見の流れの節
よくある質問 契約前の疑問への短い回答 条件を断定しすぎない、詳しい条件は物件ごとの案内へつなぐ よくある質問の型の節

4つの型を回すと、物件紹介ばかりが続く状態を避けられます。物件紹介の投稿は、募集が終わるたびに取り下げの作業が発生します。周辺環境や内見の流れの投稿は、物件の募集状況に左右されにくいため、物件の入れ替わりが激しい時期でも、アカウントの更新を止めずに済みます。

広告表示のルールの全体像|公正競争規約と景品表示法の関係

不動産の表示に関する公正競争規約とは、不動産の取引について行う表示に関する事項を定め、不当な顧客の誘引を防止することを目的とする規約であり、宅建業の免許を受けて公正取引協議会の構成団体に所属する事業者などが対象です。

規約の第1条は、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)の規定に基づき、不動産の取引について行う表示に関する事項を定めることで、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者の自主的で合理的な選択を確保することを目的とする、と書いています(表示規約・同施行規則)。規約でいう「事業者」は、宅地建物取引業法の免許を受けて宅建業を営む者のうち、公正取引協議会の構成団体に所属するものと、規約に個別に参加するものです(第4条)。

一方、おとり広告については、公正取引委員会が「不動産のおとり広告に関する表示」を告示として指定しています。おとり広告ガイドラインは、この告示が原則として、協議会に加盟する事業者かどうかにかかわらず不動産事業者のすべてに適用され、内容は表示規約と同一であると説明しています(おとり広告ガイドライン)。消費者庁の表示規制の概要のページにも、「不動産のおとり広告に関する表示」が景品表示法の指定する表示の一つとして挙げられています(消費者庁 表示規制の概要)。つまり、協議会に加盟しているかどうかを問わず、成約済みの物件を載せ続けない運用は共通の前提になります。

景品表示法の一般の説明としては、同じ消費者庁のページで、商品・サービスの品質などについての不当表示(優良誤認表示)と、価格その他の取引条件についての不当表示(有利誤認表示)が示されています。物件の内容を実際より良く見せる表現は前者、価格や条件を実際より有利に見せる表現は後者の考え方に近く、投稿の文章を点検するときの目安になります。

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SNSの投稿は規約の対象になるか|公式の文言で確認できる範囲

表示規約は、顧客を誘引するための手段として事業者が物件の内容や取引条件について行う広告表示を「表示」とし、その中にインターネットによる広告表示を含めていますが、InstagramなどのSNS投稿を名指しした文言は、今回確認した資料の範囲では見つかりませんでした。

規約の第4条(表示規約)は「表示」を、顧客を誘引するための手段として事業者が物件の内容や取引条件その他取引に関する事項について行う広告その他の表示であって、インターネットによる広告表示などを含むものと定義しています。おとり広告ガイドラインは、インターネット上の広告として「ホームページ又は不動産情報サイト事業者が運営する不動産情報サイト等に掲載するもの」を挙げ、これも規約の「表示」にあたるとしています。

この記事で開いた規約本文・おとり広告ガイドライン・改正点のリーフレットの範囲では、InstagramなどのSNS投稿が対象になるかどうかを直接述べた文言は見つかりませんでした。したがって、SNS投稿が規約の対象になるかどうかを、公式の文言だけから言い切ることはできません。そのうえで実務の考え方としては、物件の内容や取引条件に触れて顧客を誘う投稿は、ホームページの物件広告と同じ基準で点検しておくほうが、後から判断に迷いません。自社の投稿が規約の対象になるかどうかは、所属する公正取引協議会に確認するのが近道です。

物件を載せる前に確認する表示事項|インターネット広告の必要な表示事項

必要な表示事項とは、規約が物件の種別と表示媒体ごとに定めている、広告に載せなければならない項目のことで、インターネット広告については別表に○が付いた事項が対象です。

規約の第8条は、事業者が規則で定める表示媒体を用いて物件の表示をするときは、物件の種別ごとに、広告主に関する事項、物件の内容、価格などの取引条件、交通などの利便・環境に関する事項を、見やすい場所に、見やすい大きさ、見やすい色彩の文字で、分かりやすい表現で明瞭に表示しなければならないと定めています。どの項目が必要かは、物件の種別ごとの別表(別表1から別表10)で決まります。

たとえば、中古賃貸マンション・貸家などの別表9のインターネット広告の欄には、広告主の名称または商号、事務所の所在地と電話番号、宅建業法による免許証番号、所属団体名と公正取引協議会加盟事業者である旨、取引態様、物件の所在地、賃料、礼金・敷金などの費用、情報公開日(または直前の更新日)と次回の更新予定日などが並びます(別表9)。中古マンションの売買(販売戸数が1戸のもの)を扱う別表7も、同様に広告主の事項、取引態様、価格、管理費・修繕積立金、情報公開日と次回更新予定日などを求めています(別表7)。

確認する事項 別表9(中古賃貸など) 別表7(中古マンション売買)
広告主の名称、事務所の所在地、電話番号 インターネット広告の欄に○ インターネット広告の欄に○
免許証番号、所属団体名と公正取引協議会加盟事業者である旨 インターネット広告の欄に○ インターネット広告の欄に○
取引態様 貸主、代理、媒介(仲介)の別 売主、代理、媒介(仲介)の別
価格・賃料と費用 賃料、礼金、敷金・保証金、管理費・共益費など 価格、管理費および修繕積立金など
情報公開日(または直前の更新日)と次回の更新予定日 インターネット広告の欄に○ インターネット広告の欄に○

ここで注意したいのは、この一覧が「インターネット広告」の欄の定めであり、Instagramの1回の投稿にすべてを入れる必要があるかどうかは、今回開いた資料では確認できなかったことです。投稿のキャプションに全項目を載せるのか、物件ごとの詳細ページに必要な表示事項をまとめて投稿からそのページへ案内するのかという設計は、所属する協議会に確認したうえで決めてください。確認が取れるまでの暫定的な運用としては、物件の条件に触れる投稿ほど、載せる項目を省かずに書くほうが安全です。

取引態様の明示|売主・貸主・代理・媒介(仲介)を言葉で書く

取引態様の明示とは、その物件の取引で自社が売主・貸主・代理・媒介(仲介)のどの立場なのかを、これらの用語を使って広告に表示することで、投稿のキャプションにも書いておくべき基本の項目です。

規約の施行規則は、取引態様を「売主」「貸主」「代理」「媒介」(仲介)の別として、これらの用語を用いて表示することと定めています(施行規則第9条第1号、表示規約・同施行規則)。また、規約の第23条は、取引態様について事実に相違する表示や、実際のものよりも優良または有利だと誤認されるおそれのある表示を禁じています。仲介の立場なのに、自社が貸主であるかのように読める書き方は、この点で避けなければなりません。

キャプションの書き方としては、冒頭か末尾に決まった形で入れておくと抜けにくくなります。仮の例を挙げます。

書き方 取引態様の読み取りやすさ
桜町駅の2LDKをご紹介します(取引態様の記載なし) 立場が分からないため、書き足しが必要
桜町駅の2LDKをご紹介します。取引態様:媒介(仲介) 用語を使って立場を明示している
桜町駅の2LDKをご紹介します。当社が貸主の物件です 立場は読めるが、用語に合わせて「取引態様:貸主」と書くほうが読み取りやすい

駅名と間取りは架空の例です。実際の投稿では、物件ごとに取引態様が異なることがあるため、使い回しの定型文のまま別の物件に貼り付けないように、投稿の作成時に物件ごとに確認します。

おとり広告を避ける運用|成約した物件を載せ続けない

おとり広告とは、物件が存在しない、物件はあるが取引の対象にならない、物件はあるが取引する意思がない、のいずれかであるのに、その物件を広告に載せることで、規約の第21条が禁止しています。

規約の第21条は、事業者が次の広告表示をしてはならないとしています。物件が存在しないため実際には取引できない物件の表示、物件は存在するが実際には取引の対象となり得ない物件の表示、物件は存在するが実際には取引する意思がない物件の表示、の3つです。ガイドラインは、成約済みの物件を広告に出し続けることを、取引の対象となり得ない例として挙げています(おとり広告ガイドライン)。

ガイドラインは、インターネット上のおとり広告の具体的な態様として、掲載後に契約済みとなった物件を削除せず更新を繰り返す例、当初から契約済みであった物件を新規に掲載する例、架空の物件を掲載する例、取引する意思がない物件を掲載する例を挙げています。また、発生原因として、インターネット広告は情報の更新が容易であるため、一般消費者は常に取引できる物件が掲載されていると受け止めやすいこと、管理できる範囲を超えた数の物件を広告していること、物件の取引状況の確認を怠ることを挙げ、定期的な情報更新の重要性を述べています。

Instagramに物件を載せる運用で、とくに起きやすいのは、過去に投稿した物件の取り下げが後回しになることです。投稿は時間がたっても残り、プロフィールを見た人が古い投稿から問い合わせることがあります。そこで、物件紹介の投稿には、次のような運用ルールを用意しておきます。

場面 運用ルール(仮の例)
物件を投稿する前 管理システムまたは担当者に、募集中であることを確認してから作成する
契約が決まったとき 物件の担当者が当日中に、広報の担当者へ連絡し、投稿を取り下げる
定期の点検 広報の担当者が、物件紹介の投稿を一覧にして、募集状況を物件の担当者と突き合わせる
問い合わせが入ったとき すでに募集が終わっている場合は、その旨を伝えたうえで、条件の近い別の募集物件を案内する

最後の行は、募集が終わった物件に問い合わせが入ったときの対応です。ガイドラインは、取引する意思がない例として、物件の難点をことさら指摘して他の物件を勧める場合を挙げています。終わった物件の問い合わせから別の物件を案内する場合は、募集が終わっていることを先に伝える手順にしておきます。

二重価格・割引・最上級表示の注意点

二重価格表示とは、実際に販売する価格に、それより高い比較対照価格を並べて示す表示のことで、規約は事実に相違する表示や有利だと誤認させる表示を禁じ、過去の販売価格を比べる場合には要件を定めています。

規約の第20条は、二重価格表示をする場合に、事実に相違する広告表示や、実際のもの、または競争事業者のものよりも有利であると誤認されるおそれのある広告表示をしてはならないと定めています。過去の販売価格を比較対照価格とする場合の要件は施行規則の第12条にあり、過去の販売価格の公表日と値下げの日を明示すること、比較に使う価格は値下げの直前の価格であること、値下げの日から一定期間内に表示すること、物件の価値に同一性があることなどが示されています(表示規約・同施行規則)。期間の具体的な数字は条文で確認してください。

2022年9月1日施行の改正点を示したリーフレットは、二重価格表示は販売価格の比較表示のみであり、賃貸物件の賃料の比較表示はできないと説明しています(表示規約・同施行規則 主な改正点(リーフレット))。賃貸の仲介会社が「前の賃料から値下げ」と見えるような投稿を作る場合は、この点を先に確認する必要があります。

割引については、施行規則の第13条が、一定の条件に適合する相手に割引をする場合に、条件を明示して割引率・割引額・割引後の額を表示する場合を除き、不当な二重価格表示に当たるとしています。キャンペーンの投稿では、割引の対象になる条件を、投稿の画像の中だけでなくキャプションにも書いておきます。

最上級表示などの特定の用語は、規約の第18条第2項が使い方を定めています。次の表は、条文が挙げる用語の区分と、使えるようにする条件をまとめたものです。

用語の区分 条文が挙げる例 使うときの条件
最上級を意味する用語 「最高」「最高級」「極」「特級」 裏付ける合理的な根拠の資料を現に持ち、根拠となる事実を併せて表示する
著しく安い印象を与える用語 「格安」「激安」「破格」「投売り」 裏付ける合理的な根拠の資料を現に持ち、根拠となる事実を併せて表示する
欠けるところがないことを意味する用語 「完全」「完ぺき」「万全」 裏付ける合理的な根拠の資料を現に持っている場合に限る
競争事業者より優位に立つことを意味する用語 「業界一」「当社だけ」「他に類を見ない」「抜群」 裏付ける合理的な根拠の資料を現に持っている場合に限る
一定の基準で選別したことを意味する用語 「特選」「厳選」 裏付ける合理的な根拠の資料を現に持っている場合に限る
売行きがよい印象を与える用語 「完売」 裏付ける合理的な根拠の資料を現に持っている場合に限る

この表の用語は、キャプションだけでなく、ハッシュタグや画像内の文字にも当てはまるかどうかを、投稿の前に点検します。ハッシュタグに「激安」「厳選」のような語を入れる場合も、根拠資料を持っているかを基準にします。根拠を示せない場合は、物件の事実(間取り、築年、徒歩の所要時間)をそのまま書く形に置き換えます。ハッシュタグの選び方は、ハッシュタグの効果と選び方を整理した記事も参考になります。

写真・動画の扱い|取引する物件のものを載せる

写真・動画の扱いとは、宅地や建物の写真・動画は取引するものを表示するのが原則であり、コンピュータグラフィックスや完成予想図は、その旨を明示して使うという規約の基準のことです。

施行規則の第9条第22号は、宅地または建物の写真・動画は取引するものを表示すること、と定めています。取引する建物が建築工事の完了前であるなど、その建物の写真・動画を使えない事情がある場合に限って、施工者が過去に施工した他の建物の写真・動画を使えます。その場合は、他の建物である旨を、写真ならそれに接する位置に、動画なら画像の中に明示します。第23号は、コンピュータグラフィックス、見取図、完成図、完成予想図は、その旨を明示して用い、周囲の状況は現況に反する表示をしないこと、と定めています(表示規約・同施行規則)。

日常の運用に置き換えると、次の三つが基準になります。一つ目は、物件紹介の投稿で使う写真は、その物件で撮ったものに限ることです。別の部屋の写真を使い回すと、取引する物件の写真という原則から外れます。二つ目は、完成前の物件のCGや予想図には、画像の中かキャプションで「完成予想図」であることを書くことです。三つ目は、動画やリールでも同じ基準で、他の建物の映像を使うときは画像中に旨を入れることです。

画像を加工するアプリで広く見せたり明るく見せたりした写真は、実際の物件と違う印象を与えるおそれがあります。規約の第23条は、面積、間取り、採光、通風、日照、眺望などについて、実際のものよりも優良であると誤認されるおそれのある表示を禁じています。加工の程度は、実際に内見したときの印象と大きく離れないことを基準に決めます。

周辺環境の投稿の型|徒歩の分数と施設の書き方

周辺環境の投稿とは、駅までの道、商業施設、公園、街の雰囲気などを伝える型で、徒歩の所要時間は道路距離から規約の計算方法で求め、施設は現に利用できるものを物件からの距離または徒歩の所要時間とともに書くのが基準です。

施行規則の第9条は、徒歩の分数について、道路距離80メートルにつき1分間を要するものとして算出し、1分未満の端数が生じたときは1分として算出する、と定めています。仮の例として、物件から最寄駅までの道路距離が650メートルの場合を計算します。650を80で除すと8.125で、8分に1分未満の端数が残るため、表示する数値は9分です。実際に歩いた時間を測って書くのではなく、道路距離から計算した数値を載せる点が、街歩きの投稿で見落としやすい部分です。

起点にも決まりがあります。2022年9月1日施行の改正点を示したリーフレットは、最寄駅等までの徒歩所要時間を、物件から最寄駅等までで明示することに変更した、と説明しています(主な改正点(リーフレット))。「駅から物件まで」ではなく「物件から駅まで」で数える点に気をつけます。

スーパーなどの商業施設や学校・公園などの公共・公益施設については、施行規則の第9条が、現に利用できるものを、物件からの道路距離または徒歩所要時間を明示して表示すること、としています(第29号、第31号)。商業施設のうち工事中のものは、将来の利用が確かなものと認められる場合に限り、整備予定時期を明示して表示できるとされています(第31号ただし書。条件の正確な文言は条文で確認してください)。学校などの公共・公益施設の整備予定時期の表示は別の条件があるため、条文で確認してください。街の紹介でうれしい情報であっても、開業前の店舗を、すでに使えるかのように書くことは避けます。

周辺環境の書き方(仮の例) 点検の結果
桜町駅まで徒歩5分、駅前にスーパーあり 道路距離から計算した分数か、スーパーまでの距離または徒歩時間があるかを確認する
商店街まで徒歩3分、毎日にぎわう活気のある街 徒歩時間は計算で確認する。「毎日にぎわう」は根拠が示せなければ書かない
開業予定の商業施設が近くに 整備予定時期を明示し、規則が認める施設か確認する。現在使える施設とは分けて書く
静かで日当たりのよい住環境 実際の環境と食い違わないか。静かさ、日当たりを強調する場合は、現地での確認を基準にする

環境の良さを伝える言葉は、投稿の魅力を左右する一方で、規約の第23条が「実際のものよりも優良であると誤認されるおそれのある表示」を禁じている領域です。形容詞を足す前に、徒歩の分数、距離、施設の名称と営業状況のような確認できる事実を先に置くと、点検がしやすくなります。

内見の流れの投稿の型|案内の手順と、写り込みへの配慮

内見の流れの投稿とは、問い合わせから内見の当日までの手順を順番に示す型で、物件の条件を載せる場合は表示の基準に沿わせ、入居中の部屋や居住者が写り込まないよう撮影の前に確認します。

内見の流れは、募集の状況に左右されにくく、案内の段取りを伝えられる実用的な型です。一例として、次の流れを1本の投稿にまとめます。

順序 投稿に書く内容(仮の例)
1 気になる物件の問い合わせ方法(電話、メッセージなど、受け付けている窓口)
2 希望条件の聞き取り(予算、エリア、入居時期、家族構成など)
3 募集状況の確認と、案内できる物件の提案
4 内見の日程調整と、当日の持ち物・集合場所の案内
5 当日の案内と、気になる点の質問

手順の投稿でも、特定の物件を例に使う場合は、その物件が募集中であることを確認します。募集の終わった物件を例にすると、ガイドラインが挙げる「実際には取引の対象となり得ない物件」の表示になりかねません。例には、架空であることを明記した物件を使うか、物件を特定しない書き方にします。

内見の様子を動画や写真で見せるときは、入居中の部屋の私物や居住者、近隣の住民、他の来訪者が写り込む場面があります。撮影の許可を得たうえで、氏名の分かる郵便物や表札、窓から見える隣家の様子などが写っていないかを、投稿前に担当者以外の人が確認します。写真・音楽・投稿の二次利用の確認項目は、企業SNS投稿の著作権・肖像権の確認手順をまとめた記事で整理しています。

疑問に答える投稿の型|短く答え、詳しい条件は物件ごとの案内へ

よくある質問の投稿とは、契約前に多い疑問を一問一答で伝える型で、一般的な流れや考え方は短く答え、金額や条件が物件ごとに変わる部分は断定せず、物件ごとの案内につなげるのが基本です。

この型で扱いやすい質問は、条件が物件ごとに変わりにくい内容です。たとえば「内見は予約が必要か」「内見に持っていくと便利なものは何か」「問い合わせから案内までの流れはどうなっているか」といった、自社の運用で答えが決まっている質問です。一方で、費用や審査の可否、契約条件のように物件や契約によって変わる内容は、一般論として言い切ると誤認を招きます。

投稿の構成は、質問を最初に示し、答えを一文か二文で書き、条件が変わる部分は「物件ごとに異なります。詳しくは物件の案内でご確認ください」のように案内先を添える形にします。質問の例は、実際に店頭や電話で多く受けるものを担当者が拾って決めます。他社の事例や、特定の個人から受けた相談をそのまま載せることはしません。

コメントやダイレクトメッセージで質問が返ってくる場合に備えて、返信の基準と担当を決めておくと、運用が止まりません。基準づくりは、企業SNSのコメント・DM対応ルールの作り方をまとめた記事が参考になります。

投稿前の点検表|物件を載せる投稿の記入例

投稿前の点検表とは、物件の内容や条件に触れる投稿について、取引態様、募集状況、用語、写真、周辺環境の書き方を、公開の前に担当者と確認者が項目ごとに確かめる記録です。

投稿の作成者と確認者を分け、次の点検表を使うと、見落としが減ります。記入例は架空の物件です。

点検項目 確認する内容 記入例(架空)
取引態様 用語(売主・貸主・代理・媒介(仲介))で書いてあるか 「媒介(仲介)」と記載、確認済み
募集状況 投稿日に募集中か、確認者と日付 募集中を担当者が確認、投稿日に記録
必要な表示事項 該当する別表の項目が、投稿または案内先のページにあるか 案内先の物件ページに記載、確認済み
用語 最上級、著しく安い印象、優位を示す用語がないか(ハッシュタグ、画像内の文字を含む) 該当なし
写真・動画 取引する物件のものか、CGや他の建物はその旨を明示したか 当該物件で撮影、確認済み
周辺環境 徒歩の分数を道路距離から計算したか、施設は現に利用できるか 650メートルを計算し、徒歩9分と記載
写り込み 居住者、私物、表札、近隣の様子が写っていないか 確認者が全画像を確認
取り下げの条件 募集終了時に誰が取り下げるか 物件の担当者が広報担当へ連絡

点検表は投稿ごとに保存し、後から「いつ、誰が、何を確認したか」を追えるようにします。アカウントの権限や担当者交代に備えた管理は、企業SNSアカウントの権限管理と引き継ぎ手順の記事にまとめています。

プレゼント企画や業務委託をするときの確認先

プレゼント企画や制作の委託をするときは、不動産業の景品類の提供に関する別の規約と、一般の景品表示法の両方を確認する必要があり、この記事では扱っていない範囲です。

不動産公正取引協議会連合会は、表示規約とは別に、「不動産業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約・同施行規則」を公開しています(公正競争規約の紹介)。この記事ではその内容を確認していないため、来場特典やフォロワー向けのプレゼント企画を行う場合は、規約の本文を読むか、所属する協議会に確認してください。一般の景品規制については、SNSプレゼントキャンペーンと景品表示法をまとめた記事も参考になります。

Instagramの運用を外部に委託する場合も、規約の第2条は事業者自身に、適正な広告その他の表示をするよう努める責務を定めています。第3条は、事業者から広告制作の依頼を受けた広告会社等にも、規約の趣旨にのっとって適正な広告を制作するよう努める責務を定めており、制作を任せた場合も事業者の責務は残ります。委託先に任せきりにせず、点検表の確認者は自社の担当者にしておく運用が現実的です。

よくある質問(FAQ)

Q1. Instagramの投稿も、不動産の公正競争規約の対象になりますか。
この記事で開いた規約本文・おとり広告ガイドライン・リーフレットの範囲では、Instagramの投稿を名指しした文言は見つかりませんでした。規約は、顧客を誘引するための手段として事業者が行う、物件の内容や取引条件に関する広告表示を対象とし、その中にインターネットによる広告表示を含めています。自社の投稿が対象になるかは、所属する公正取引協議会に確認してください。
Q2. 成約済みになった物件の投稿は、削除しなければいけませんか。
おとり広告ガイドラインは、成約済みの物件を広告に出し続けることを、取引の対象となり得ない物件の表示の例として挙げています。募集が終わった物件の投稿は、取り下げる運用を前提にしておくのが安全です。
Q3. 投稿には取引態様を書く必要がありますか。
施行規則は、取引態様を表示するときは、売主・貸主・代理・媒介(仲介)の別をこれらの用語で書くことを定めており、別表のインターネット広告の欄にも取引態様が含まれています。物件の条件に触れる投稿では、冒頭か末尾に用語で書く運用が分かりやすい方法です。投稿の形式ごとの扱いは、協議会に確認してください。
Q4. 「値下げしました」と書いて、前の賃料を並べてもよいですか。
改正点のリーフレットは、二重価格表示は販売価格の比較表示のみで、賃貸物件の賃料の比較表示はできないと説明しています。賃貸の値下げを前の賃料と並べる書き方は、使う前に協議会へ確認してください。
Q5. 「格安」「厳選」のような言葉は使えますか。
「格安」のように著しく安い印象を与える用語は、規約の第18条第2項で、合理的な根拠を示す資料を現に持ち、根拠となる事実を併せて表示する場合に限って使えるとされています。「厳選」のような用語も、根拠資料を現に持っている場合を除いて使えません。徒歩の所要時間は、道路距離から計算した分数を事実として書く方法に置き換えると、点検しやすくなります。
Q6. 完成前の物件のイメージ画像を載せても問題ありませんか。
施行規則は、コンピュータグラフィックスや完成予想図は、その旨を明示して用いることを定めています。他の建物の写真を使う場合は、他の建物である旨を、写真に接する位置か動画の画像中に明示する必要があります。

まとめ

不動産会社のInstagramは、物件紹介・周辺環境・内見の流れ・よくある質問の4つの型で設計し、物件の内容や条件に触れる投稿は、広告表示と同じ基準で点検する運用が安全です。点検の軸は、取引態様の明示、成約済み物件を載せ続けないこと、二重価格・最上級表示などの用語の使い方、写真・動画と周辺環境の書き方の4つです。

Instagramの投稿が規約の対象になるかどうかは、今回確認した公式資料の範囲では直接述べた文言が見つかりませんでした。まず取引態様と募集状況を確認する点検表を1枚作り、規約の細かい当てはめは所属する公正取引協議会や専門家に確認しながら進めてください。同じ型で業種ごとに整理した記事として、学習塾のInstagram運用、飲食店のリール活用、ホテル・旅館のインスタ集客もあります。

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