SNS運用代行の乗り換えで先にやることは、新しい会社探しではありません。今の会社から取り戻すものを洗い出すことです。
洗い出す対象は、アカウントの管理権限、制作物と素材、数値データ、顧客や応募者の情報の4つです。契約が終わってから探すと、渡してもらえるものと渡してもらえないものが分かれます。
この記事は、運用代行から別の会社や社内運営に切り替えたい店舗・企業の担当者を想定しています。民法の解除と報告の規定、著作権の契約の考え方、引き継ぎの確認表を、仮の例つきで整理します。
- 乗り換え前に洗い出す4つの引き継ぎ対象
- 委任契約の解除と報告について民法が定めていること
- 制作物の権利を契約で確認する理由
- 切り替えの4段階と、旧会社へ伝える依頼メモ
民法の条文はe-Gov法令検索の民法、著作権の契約は文化庁の誰でもできる著作権契約マニュアルで、2026年11月4日に確認した記載に限っています。
文中の依頼メモと進め方は、手順を説明する「仮の例」です。実在の企業や案件ではありません。個別の契約の判断は、弁護士などの専門家に確認してください。
結論|乗り換えは「取り戻すもの」の棚卸しから始める
SNS運用代行の乗り換えとは、運用を任せている会社との契約を終えて、別の会社か社内に運用を移すことです。移す前に、権限、制作物、データ、情報の4つを、誰が持っているかで整理します。
運用の中身は、代行会社のノウハウとして残りがちです。自社の資産になっているものと、契約が終わると使えなくなるものを、先に分けておきます。
次の4つは、乗り換え前に所在を確認します。
- アカウントの管理権限とログイン情報
- 投稿画像・動画・文章などの制作物と元データ
- 投稿の数値や月次レポートなどの運用データ
- 問い合わせ・応募者・顧客リストなどの個人情報
この記事は、乗り換えで成果が上がることを約束するものではありません。切り替えで困らないための準備を整理したものです。
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委任契約の解除と報告|民法が定めていること
民法は、委任契約について、各当事者がいつでも解除できると定めています。ただし、相手に不利な時期の解除などでは、損害を賠償する場合があります。
民法第651条第1項は「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。」と定めています。第2項では、相手方に不利な時期に解除したときは、やむを得ない事由がない限り、相手方の損害を賠償するとしています。出典はe-Gov法令検索の民法です(2026年11月4日確認)。
法律行為でない事務の委託には、第656条により、委任の規定が準用されます。運用代行のように事務を任せる契約が、これに当たる場合があります。
自社の契約が当たるかどうかは、契約書の内容を見て、専門家に確認します。最低契約期間や解約の申し出の期限が契約書にあれば、その文言も合わせて確認します。
次の表は、乗り換えに関係する条文を整理したものです。右の列の使いどころは編集部の整理です。
| 条文 | 民法が定めていること | 乗り換えでの使いどころ |
|---|---|---|
| 第651条 | 各当事者がいつでも解除できる。相手に不利な時期の解除などは損害賠償の場合がある | 解約を申し出る時期と、契約書の解約条件を並べて確認する |
| 第645条 | 受任者は、依頼者の請求があればいつでも事務処理の状況を報告し、終了後は遅滞なく経過と結果を報告する | 運用の状況や結果の報告を、引き継ぎ資料として求める根拠になる |
| 第646条 | 受任者は、事務の処理で受け取った金銭その他の物を依頼者に引き渡す。自分の名で取得した権利は依頼者に移転する | 預けた資料や、代行会社の名義で取得したものの扱いを確認する |
条文は一般的な定めです。契約書に別の取り決めがある場合は、契約書の内容と合わせて専門家に確認します。
引き継ぎの対象は4分類|誰が持っているかを確認する
引き継ぎの対象は、権限、制作物、運用データ、個人情報の4分類に分けると、抜けを防げます。分類ごとに、現在の保管者と、乗り換え後の保管先を決めます。
次の表は、確認の観点を整理したものです。分類と担当の分け方は編集部の整理で、会社や契約によって変わります。
| 分類 | 具体例 | 確認すること | 社内で決める人 |
|---|---|---|---|
| 権限 | アカウントの管理者権限、ログイン情報、広告やツールの契約名義 | 誰の名義か、旧会社の担当者に権限が残っていないか | アカウントの責任者 |
| 制作物 | 投稿の画像・動画・文章、編集前の元データ | 元データを受け取れるか、乗り換え後も使ってよいか | 広報・マーケティングの責任者 |
| 運用データ | 月次レポート、投稿の数値、投稿計画、競合の整理 | どの形式で、どこまでの期間を受け取れるか | 運用の責任者 |
| 個人情報 | 問い合わせ者の連絡先、応募者のデータ、顧客リスト | どこに保管されているか、返却や削除をどう確認するか | 個人情報の管理責任者 |
権限の管理と引き継ぎの具体的な手順は、企業SNSアカウントの権限管理と引き継ぎで整理しています。乗り換えでは、旧会社の担当者の権限を外す工程が加わります。
個人情報を預けていた場合の考え方は、SNS運用代行と個人情報保護法で確認できます。返却と削除の確認は、委託契約の条件として先に決めておく項目です。
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制作物の権利は契約で決まる|文化庁のマニュアルから
制作を依頼しただけでは、完成した著作物の著作権を取得したことにはなりません。依頼した側に帰属させるには、契約で合意しておく必要があります。
文化庁の誰でもできる著作権契約マニュアルは、著作物の制作を依頼した場合でも、完成した著作物の著作権を取得したわけではないと説明しています。取得するには、契約で「完成した著作物の著作権は制作を依頼した側に帰属する」といった合意が必要だとしています(2026年11月4日確認)。
同じマニュアルは、著作権を譲渡せずに利用を許諾する契約では、認める利用方法を明確にするよう求めています。たとえばインターネット配信のみを認める場合は、その旨を明記する例が示されています。
運用代行の乗り換えでは、この考え方を次のように当てはめられます。当てはめは編集部の整理です。
- 代行会社が作った投稿画像や動画を、乗り換え後も使い続けられるか
- 使える場合、利用方法や期間に制限はあるか
- 編集前の元データを受け取る権利はあるか
自社の社員や店舗が撮影した写真など、自社で用意した素材は、代行会社に預けたものとして返却を求めます。契約書に権利の条項がない場合は、乗り換えを決める前に、旧会社へ確認します。
切り替えの進め方|4段階で整理する
切り替えは、契約書の確認、引き継ぎ範囲の書面化、並行運用の期間の設定、権限の移管の4段階に分けると、抜けが出にくくなります。
次の進め方は、手順を説明する仮の例です。日程は契約と体制によって変わるため、数字は示していません。
- 契約書を読み、解約の申し出の期限、予告の方法、終了時に引き継がれるものを確認する
- 分類ごとの確認表を埋め、旧会社へ引き継ぎの範囲を書面で伝える
- 新しい会社か社内の担当者を決め、旧会社の運用と重なる並行運用の期間を設ける
- 管理権限を移し、旧会社の担当者の権限を外して、ログインと投稿を自社で確認する
契約書の確認を最初に置くのは、解約の申し出の時期によって、費用や損害の扱いが変わる場合があるためです。口頭の説明と契約書の文言が違う場合は、契約書を基準にします。
並行運用の期間は、投稿の計画と引き継ぎの量で決めます。旧会社の運用を止める前に、新しい運用で投稿できる状態を作ります。
権限を移す順番も大切です。新しい担当者の権限を先に追加し、動作を確認してから、旧会社の権限を外します。
旧会社へ伝える依頼メモ|仮の例
依頼メモとは、引き継ぎの範囲と形式を書面で伝える文書です。口頭だけで伝えると、引き継ぎ漏れの原因になります。
次は、旧会社への依頼メモに入れる項目の仮の例です。会社名や日付は入っていません。
- 引き継ぎを求める対象:分類ごとの確認表で「受け取る」とした項目
- 受け取る形式:画像・動画は元データ、数値はファイル形式を指定
- 報告の依頼:運用の状況と結果の報告(民法第645条の考え方に沿った資料)
- 権限の移管:移管の方法と、旧担当者の権限を外す手順
- 個人情報:返却と削除の方法、削除後の確認方法
- 回答の期限:旧会社が回答する日を、契約の終了日より前に設定する
旧会社との関係を悪くしたくない場合も、依頼メモは事実を並べる形で書きます。不満や評価は書かず、必要な項目だけを伝えます。
依頼メモの回答は、記録として残します。回答に曖昧な点があれば、契約書の該当条項を示して再度確認します。
内製に戻す場合と別の会社に移す場合の違い
乗り換え先が社内か別の会社かで、引き継ぎで重くなる項目が変わります。社内なら運用データと手順書、別の会社なら権限と素材の受け渡しが中心です。
次の表は、乗り換え先ごとの重点です。重点の分け方は編集部の整理です。
| 乗り換え先 | 引き継ぎで重くなる項目 | 先に決めておくこと |
|---|---|---|
| 社内で運営する | 運用データ、投稿計画、作業の手順 | 誰が運用し、誰が承認するか |
| 別の会社に移す | 権限、元データ、旧会社との並行期間 | 新しい会社に渡す範囲と、旧会社への依頼の順序 |
| 一部を社内に戻す | 戻す作業の範囲に合う権限と手順 | 残す委託と戻す作業の線引き |
社内に戻す場合は、SNS運用の内製化とはで、外注との費用比較や進め方を確認できます。委託の種類の違いは、SNS運用支援の種類と選び方が参考になります。
新しい会社を探す場合は、Instagram運用代行の契約前チェックリストで、契約前に確認する項目を整理しています。今回の引き継ぎの項目を、新しい契約に入れておきます。
よくある質問(FAQ)
- Q1. 運用代行はいつでも解約できますか。
- 民法第651条は、委任について各当事者がいつでも解除できると定めています。ただし、相手に不利な時期の解除などでは損害賠償の場合があり、契約書の条件も確認が必要です。
- Q2. 代行会社に運用の報告を求められますか。
- 民法第645条は、受任者が依頼者の請求に応じて事務処理の状況を報告し、終了後は遅滞なく経過と結果を報告すると定めています。自社の契約が当たるかは、契約書を見て専門家に確認します。
- Q3. 代行会社が作った投稿画像を、乗り換え後も使えますか。
- 契約の内容によります。文化庁のマニュアルは、権利の帰属や利用方法を契約で明確にするよう説明しています。契約書に条項がなければ、旧会社へ書面で確認します。
- Q4. 元データは受け取れますか。
- 受け取れるかは契約と合意の内容で決まります。契約書の条項を確認し、不明なら依頼メモで形式を指定して求めます。
- Q5. 旧会社の権限は、いつ外せばよいですか。
- 新しい担当者の権限を追加して動作を確認した後に外します。先に外すと、投稿や設定の変更ができなくなる場合があります。
まとめ|乗り換えの準備は、取り戻すものの整理から
SNS運用代行の乗り換えでは、権限、制作物、運用データ、個人情報の4つを、誰が持っているかで整理します。契約書の解約条件を確認し、引き継ぎの範囲を書面で旧会社に伝えます。
民法は、委任の解除と報告について一般的な定めを置いています。制作物の権利は契約で決まるため、契約書の条項を先に読みます。
この記事の内容は一般的な整理で、個別の契約を判断するものではありません。実際の切り替えでは、契約書を専門家に確認してください。
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